【嘉手納】沖縄に甘藷(かんしょ)を伝え、民衆を飢えから救った嘉手納出身の偉人「野國總管」の偉業を後世へ継承しようと、元嘉手納町教育長の伊波勝雄さん(80)=同町屋良=がこのほど、著書「平成甘藷考―野國總管を中心に―」をまとめた。「町の教育者として甘藷の始祖の偉業と、その魅力を広く発信することが使命だ」と力を込める。
伊波さんは2005年に嘉手納町で開かれた「甘藷伝来400年祭」の記念史編さんに携わったのを機に、10年以上資料収集や調査研究を続けてきた。本書はその「集大成」となる。野國總管の功績だけでなく人間性や洞察力に感銘を受け、教育長時代には野國總管が体現した「国際性」や「社会貢献」などの遺徳を町の教育目標に盛り込むなど、町独自の教育指針も打ち出してきた。
本書では野國總管の出自や人物像のほか、甘藷が琉球から鹿児島(薩摩)を経て全国へと広がる経緯、野國總管祭や甘藷フォーラムについても詳細をつづっている。野國總管が中国から持ち帰った甘藷の栽培と普及に尽力し、沖縄農業の画期的な発展に寄与した儀間真常や、品種「沖縄100号」の生みの親、松永高元など、18人の功労者についてもまとめた。
伊波さんは「嘉手納町民の一人として、わが国の甘藷の始祖である野國總管を多くの人に知ってほしい」と3年がかりで本を書き上げた。「本書が嘉手納町の歴史的資料としてだけでなく、教育書としても活用されることに期待したい」と話す。地名や人名には全てふりがなが振られ、子どもにも読みやすく配慮されている。
B5判286ページ。200冊を発行。税込み2千円(送料別)。問い合わせは伊波さん、(電話)090(1949)4557。