遺贈寄付 関心高まり 県内、子の貧困対策支援も


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「子どもの困窮を解決する事業のために活用してください」と記した遺言書の文言をなぞる女性

 亡くなった後に特定の団体や活動へ財産を寄付する「遺贈寄付」への関心が広がりつつある。県内でも遺贈寄付として、子どもの貧困問題に取り組む団体や平和活動を支援する基金などへ寄付が行われるなど、新たな社会貢献の形として注目される。関心が広がる背景には、少子化や親戚との関係性の希薄化なども指摘される。

 本島北部出身の70代女性も遺贈寄付の手続きをした一人。女性には19歳年上の東京出身の夫がいたが、約3年前に病気で他界。「自分にも、いつ何が起きるか分からない」。そう考え、財産の整理や処分を進めることにした。

 子どもはおらず、夫の死後、夫婦で46年間住んでいた本島中部の3階建て住宅を売却し、老後をゆっくりと過ごせる介護付きの福祉施設に入居した。生活に必要な経費を差し引いた上で、亡くなった後も残る貯金などをどうするか、決めあぐねていた。そうした時期に知人の紹介で、資産運用や相続計画に携わる企業「シナジープラス」(中城村)の存在を知った。

 相談に応じたのは行政書士の資格を持つ同社の仲根佑亮さん。女性は自分の思いで寄付先を決め、死後も社会貢献できる遺贈寄付について説明され、賛同した。仲根さんの助言を受けて昨年9月に作成した遺言書には、付言として「子どもの困窮を解決する事業のために活用してください」と記した。公益財団法人「みらいファンド沖縄」(那覇市)を通じ、寄付が各団体に届くよう仲根さんに託した。

 みらいファンド沖縄は2017年以降、3件の手続きを支援した。同団体で副代表理事を務める平良斗星さんは、遺贈寄付への関心の広がりについて「少子化や親戚付き合いの希薄化などもあるのではないか。第一の相続人が数十年も会ったことがないおいやめいになっている場合もある」と指摘する。

 「年齢もあって夫との間に子どもはできなかった」と言う女性だが、「子どもが好き。少しでも役立てばと思う」と語る。

 シナジープラスには、基本的な仕組みなども含めた問い合わせがこの数年で徐々に増えているという。仲根さんは「遺贈寄付は本人の思いをかなえる一つの手段となる」と話した。
 (古堅一樹)