無保険、医療費が心配…受診遅れで2人死亡 沖縄県内 民医連調査 全国では77人が死亡


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記者会見する沖縄民医連の(右から)名嘉共道事務局長、座波政美会長ら=12日、那覇市の県庁記者クラブ

 経済的な理由で国民健康保険の保険料が払えず「無保険」状態になったり、保険証を持っていても医療費の窓口負担分の支払いが難しかったりしたために受診が遅れ、死亡した人が2018年に26都道府県で77人に上ったことが全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査で分かった。沖縄民医連は12日に県庁記者クラブで記者会見し、県内は2人だったと明らかにした。

 調査は民医連に加盟する全国の病院と診療所636施設(県内9施設)が対象。05年から調査しており、05~18年の県内の累計は34人に上る。沖縄民医連の名嘉共道事務局長は「全県的に同じような状況にあるだろうと推測でき、今回の結果は氷山の一角だと考える」と述べた。

 18年の県内の事例は70代と30代の男性。70代男性はスーパーで買い物中に気分が悪いと訴えて救急搬送された。1人暮らしで無保険状態だった。脳幹出血と診断され、意識が戻らぬまま死亡した。30代男性は中学、高校時代のいじめをきっかけに引きこもるようになり、母親の年金と弟の収入でぎりぎりの生活を送っていた。国保に加入していたものの、医療費を心配し歩行困難などの症状が出ても我慢を続けた。家族の要請で救急搬送されたが、壊死(えし)性筋膜炎、敗血症と診断され、20日後に亡くなった。

 沖縄民医連によると、この2人以外にも日雇い労働で住所が定まっていない60代男性の死亡事例もあったが、詳細が確認できないなどの理由で集計に入れていない。沖縄民医連は「社会から孤立して亡くなる事例は今後増えるのではないか」と指摘する。

 民医連は、生活困窮者に対して医療機関が無料か低額な料金で診療を行う「無料低額診療事業(無低診)」の周知徹底も訴えている。沖縄協同病院など民医連に加盟する8施設で実施されている。問い合わせは沖縄民医連(電話)098(833)3397。