[日曜の風]高い支持率 安倍政権、一つの謎


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 安倍政権に対する世論の支持率が、なかなか大きくは下がらない。傾向的にみれば、支持と不支持が拮抗していて、イメージされているほどの高支持率政権ではない。

 だが、モリカケ問題や閣僚・準閣僚の稀(まれ)にみる不心得発言などを考えれば、急激・急速に支持率急落に見舞われていておかしくない。なぜそうならないのか。その理由の一端を、ごく最近、目の当たりにした。ある講演会で質問を受けていた時のことである。

 一人の質問者の発言趣旨を整理すれば、次の通りだ。「講師が安倍政権の政策運営に警鐘を鳴らすのはよく分かる。だが、本日の話はむしろ野党政治家たちに語り、安倍政権への追及の仕方を指南してもらいたい。彼らが安倍政権による政策運営の軌道修正につながるような提案が出来るよう、方向づけしてやってほしい」。こう力説された後、質問者は次のように続けた。「ここにいるのは皆、中小企業経営者だ。つまり保守派である。政権交代を望んでいるわけではない。政策がまともになってくれればいい。講師も、要はそうですよね?」

 講師は、決してそうではない。政権が変わらなければ、政策がまともになることもないと確信している。だから、そう申し上げた。そこは見解の相違ということで円満に終わった。それはそれでいい。

 だが、それだけの話ではない。このやり取りの中に、安倍政権に関するいわば固定客層の一つの横顔が、くっきり浮かび上がっている。このレリーフには、三つの特徴がある。第一に、中小企業経営者である以上、保守派でなければいけない。そうであるに違いないという確信。第二に、保守派ではあるが、安倍政権にはどうも危うさを感じる。第三に、だが、政権交代は絶対的にまずい。だから、安倍政権に何とかまともな保守政権らしくなってほしい。そうなるまで、支持を止めるわけにはいかない。

 そこにあるのは、善良だが思い込みが激しく、必死で頑張っている中小企業経営者の姿だ。こういう皆さんの懸念につけ込んで政権を維持している。それがチームアホノミクスだ。さらに一段と許せなくなって来た。

(浜矩子、同志社大大学院教授)

(2019年4月21日 琉球新報掲載)