「飲まないで」 嘉手納基地近くの湧水汚染 沖縄県調査 高濃度PFOS検出


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 【嘉手納】沖縄県企業局が昨年実施した米軍嘉手納基地周辺の水質調査で、比謝川取水ポンプ場周辺の湧き水(カー)から、発がん性のリスクが指摘されている有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)が高濃度で検出されたことが23日分かった。企業局が同基地周辺の湧き水を調査するのは初めて。県企業局は汚染水に触れるだけでは影響を及ぼすことはないが、「飲まないで」と呼び掛けている。識者は基地が水質汚染の原因である可能性がさらに高まったと指摘する。県企業局は結果を県環境部と嘉手納町に伝えた。同町は19日、注意喚起の看板を3カ所の湧き水に設置した。

高濃度の有機フッ素化合物が検出されたシリーガー。かつて地域住民が洗濯などの生活用水として使用していた=23日、嘉手納町屋良

 調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」(IPP)の河村雅美代表が情報開示請求で企業局から入手した資料で明らかになった。企業局は飲料水の水質管理の一環として2014年から定期的に取水ポンプ場を調査している。昨年4月から比謝川取水ポンプ場の北西にある長田川取水ポンプ場でPFOSの濃度上昇が見られたため、比謝川の河川水とその周辺地下水の調査に着手した。

 昨年5月28日から7月30日まで計7回、比謝川取水ポンプ場を中心に湧き水や河川水9エリアで調査した結果、嘉手納町屋良の住宅地内にあるシリーガー、ウブガーなど6カ所で1リットル当たり千ナノグラム以上を検出した。PFOS・PFOAは発がん性のリスクが指摘される。国内での環境基準値はないが、米国では飲料水中の生涯健康勧告値を1リットル当たり70ナノグラムとしている。

 環境調査に詳しい名桜大学の田代豊教授(環境科学)は地下水はその土地に含まれる成分や環境状況を反映するデータだと指摘する。今回の調査では初めて嘉手納基地の北から北西にかかる地域の状況が読み取れたとし「これまで分かっていた以上に基地の広い範囲で地下水の汚染があり、それが基地外へ流出している可能性がある」とした。

 県環境保全課も今年1月に同地点などで水質調査を実施した。23日に公表した調査結果ではウブガーで2100ナノグラム、嘉手納町水釜の地下水で2千ナノグラムが検出された。
 (当銘千絵)