米兵事件に沖縄県議会が抗議 全会一致で可決 再発防止を求める


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 沖縄県北谷町で発生した在沖米海兵隊所属の海軍兵による女性殺害事件を受け、県議会(新里米吉議長)は26日、臨時会を開き、再発防止などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。決議と意見書は、事件の直後に判明した脱走兵の存在や米兵の酒気帯び運転事故などを含め「米軍基地あるが故の事件・事故」と批判した。県議会事務局によると、県議会は関係機関を議会に呼び出して抗議する考えだったが、沖縄防衛局と外務省沖縄事務所は応じなかった。

 2016年の米軍属による女性暴行殺害事件にも触れ「繰り返された凶悪事件は県民に大きな不安と衝撃を与えた」と説明。深夜外出や基地外での飲酒を規制するリバティー制度の緩和や、被害女性への接近禁止命令にもかかわらず海軍兵の外出を許可した米軍に対し「監督責任が問われる」と非難した。

 事件・事故が繰り返されることに「米軍の軍人・軍属らに対する人権教育などの実効性に疑問を抱かざるを得ない」と指摘した。

 抗議決議の宛先は駐日米大使と在日米軍司令官、在沖米四軍調整官、在沖米総領事で、意見書の宛先は首相と外務相、防衛相、沖縄担当相。

 決議・意見書では(1)県民に改めて謝罪し、遺族に完全な補償をすること(2)米軍人・軍属らによる事件・事故の根絶および再発防止のための抜本的な対策を講じること(3)日米地位協定を抜本的に見直し、米軍基地の大幅な整理・縮小を図ること―の3点を要請した。国、県、県警、米軍などの関係機関が連携を強化することも求めた。

 県議会は関係機関に直接、決議・意見書を提出する方針だ。防衛局と外務省沖縄事務所が議会に呼び出しても応じないため、県議団が連休明けに両機関に出向く方向で調整している。5月中旬には上京し、関係省庁に抗議・要請する。


◇北谷米兵女性殺害 県議会抗議決議全文

 去る4月13日、北谷町において在沖海兵隊所属の米海軍兵が日本人女性を殺害し、自殺したと見られる事件が発生した。2016年に起きた米軍属による女性殺人事件に続いて繰り返された凶悪事件は、県民に大きな不安と衝撃を与えた。

 事件は、深夜外出・基地外飲酒を制限する公務時間外行動規則(リバティー制度)を緩和した後に発生したものであり、また、ことし1月に米海軍兵に対し、被害女性への接触禁止令が出ていたにもかかわらず、外出許可を与えた米軍の対応は監督責任が問われるものである。

 さらに、その後も嘉手納基地所属の空軍兵による飲酒絡みの交通事故や脱走事案等も立て続けに起こっている状況である。

 国土面積のわずか0・6%の本県に約70・3%の在日米軍専用施設が押しつけられている現状があり、これらは米軍基地あるがゆえの事件・事故だと言わざるを得ない。

 本県議会は、これまで米軍人・軍属等による事件・事故が発生するたびに綱紀粛正、再発防止及び関係者への人権教育等を徹底するよう米軍等に強く申し入れてきたところであるが、またしてもこのような事件が発生したことは、米軍における軍人・軍属等に対する人権教育等の実効性に疑問を抱かざるを得ない。

 よって、本県議会は、県民の人権・生命・財産を守る立場から、今回の事件に対し厳重に抗議し、今後、国、県、警察及び米軍等の関係機関の連携強化を求めるとともに、下記の事項が速やかに実現されるよう強く要求する。

   記

1 日米両政府は、県民に対して改めて謝罪し、遺族に完全な補償を行うこと。
2 日米両政府は、米軍人・軍属等による事件・事故の根絶及び再発防止のための抜本的な対策を講ずること。
3 日米地位協定の抜本的な見直しを行うとともに、米軍基地の大幅な整理・縮小を図ること。

 上記のとおり決議する。

 平成31年4月26日
 沖縄県議会