[日曜の風]マスコミ 加害者の自覚はあるか


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 衆院沖縄3区補選は、屋良朝博氏が勝利した。野党系の屋良さんはもちろん、辺野古の米軍基地建設に反対した。それを新聞・テレビ局各社は、「普天間飛行場の辺野古移設に反対」と報じたが、この報じ方、変じゃね?

 これじゃ、デニーさんや屋良さんが「普天間はそのままでいいから」と言っているよう。これって印象操作じゃ。

 たしかに、政府与党の言い分は「危ない普天間をそのままにしておけない。辺野古への移設を急がねば」だ。けれど、辺野古の工事は何年かかるかも(いくらかかるかも)わからない。よって、普天間の返還はいつになるかわからない。ほんとに普天間が危険で住民を心配しているなら、政府はなぜすぐにどうにかしないのか? それにデニーさんは屋良さんは、「危ない普天間もやめろ。米軍の負担を沖縄だけに押し付けるな」と言っている。

 菅官房長官は補選の結果が出た翌日、「丁寧に説明させていただきながら、辺野古の埋め立てを進めさせていただきたい」と述べた。そして、前出に挙げた普天間は危ないという話をした。あたしだって、その話の矛盾は指摘できる。なのになぜかその場にいた記者たちからは、当たり前の質問が出てこない。

 いじめっ子に被害者が、「殴られるのは嫌なんだ。もう殴らないでくれ」そう何度も言っているのに、「なんで殴るか説明すっから」そう言ってまた殴られたみたいな話だよ。しかも、いじめっ子はこの国の最高権力で、それをつぶさに見ているくせに許してしまうメディアがいる。

 いいや、この国の多くのメディアは、見て見ないふりをするだけじゃない。

 7月の参議院選挙前に向け、消費税増税が延期となりそうだ。これで3度目。安倍政権はまた『この決断を、支持するか、しないか』という選挙をするのだろうか。前のときのように、メディアはその詐欺の片棒を担ぐのか。こうなってくると、国民の直接の加害者はマスコミとなる。

(室井佑月、作家)