憲法記念日の3日、「2019憲法講演会」(主催・県憲法普及協議会、沖縄人権協会、日本科学者会議沖縄支部)が浦添市のてだこホールで開かれた。ジャーナリストの青木理さんとノンフィクションライターの渡瀬夏彦さんが「沖縄から鍛える民主主義」を演題に対談した。会場には約1100人が来場。安倍政権の下で改憲議論が進む中、平成の天皇が退位し令和となって初めての憲法記念日を迎え、立憲主義の重要性について考えた。
講演会で青木さんは民主主義について「基本的には多数決だが、憲法が土台にある。土台を守った上で進めることが正しい民主主義の在り方だ」と指摘した。その上で「少数者への配慮や思いやりを常に考えることが重要だ」とし、米軍基地が集中する沖縄に安倍政権が民意を無視する形で新基地建設を強行している現状を問題視した。
さらに「メディアの問題も大きい」と言及。権力を監視し、少数者に耳を傾け問題提起することが「健全な民主主義に不可欠な装置だが、そうなっていない」と提起した。
安倍晋三首相の改憲論については「首相の憲法への思いはコアな支持基盤によるものしかない」と指摘した。安倍首相が過去に憲法改正手続きを定めた96条改正を打ち出したことに着目。改正の条件を緩めようとする動きとして「本気で改憲したいなら真正面から議論したらいいが、正面突破が難しいからどこかを突破口にする発想」と批判し、安倍政権下での改憲に警鐘を鳴らした。
渡瀬さんは名護市辺野古の新基地建設を巡り「知事の承認撤回に対し、国の機関同士で取り消しを決めるという茶番劇をする。既成事実化で諦めさせようとする実態がある。それを伝えないメディアの問題もある」と投げ掛けた。
◇9条守る決意固く 来場者
県憲法普及協議会などが3日に浦添市てだこホールで開催した憲法講演会では、改憲を目指す安倍政権を軽妙かつ率直に批判したジャーナリストの青木理さんの語りに、満員の参加者が聞き入った。参加者からは戦争放棄や戦力不保持を定めた憲法9条を守る決意の声や、民意を無視して米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を強行する政府を批判する声が聞かれた。
青木さんが世論調査で現政権下における改憲に反対する意見が多いことに「国民も現政権のやり方に『まずい』と感じている」と指摘すると、参加者から大きな拍手が起こった。
沖縄戦当時、本島北部の山中に避難して生き抜いた島袋正子さん(84)=宜野湾市=は「絶対に9条を改正してはいけない」という思いを胸に参加した。「戦争をしたために沖縄には今も多くの基地がある」と指摘し、辺野古への新基地建設について「どうして沖縄にだけ押し付けるのか」と憤った。
名護市から参加した男性(47)は「国民との話し合いなしに現政権下で改憲することは許されない」と強調した。
スタッフとして参加した瀬底言(げん)さん(29)は「国家主義的な言論が目立つようになり危機感を持っている。憲法学の積み重ねを大切にし、冷静に議論することが必要だ」と話した。