【記者解説】糸数慶子氏と高良鉄美氏が共同会見から見えること


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
夏の参院選でオール沖縄陣営からの出馬を表明した高良鉄美氏(右)と握手する糸数慶子参院議員=7日午後、那覇市の教育福祉会館

 夏の参院選沖縄選挙区に向け、社大党が擁立した高良鉄美氏と現職の糸数慶子氏がそろって会見に臨み、握手を交わした。県政与党間で懸案事項だった社大党と糸数氏との対立関係が解消され、一転して融和ムードが演出された格好だ。

 会見に同席した玉城デニー知事があいさつで「この瞬間を皆が心待ちにしていた」と述べたように、社大党が高良氏を昨年末に擁立して以降、党と糸数氏との確執は与党内で「オール沖縄に亀裂を入れる」(与党幹部)可能性があるとして大きな懸念材料となっていた。実際、県民有志が「『県民の声』100人委員会」を発足し、透明性のある候補者選考を求めるなど、選考のやり直しを求める動きが活発化したこともあり、高良氏の出馬表明は約1カ月遅れた。

 この日の会見が実現したことを受け、社大党は高良氏の後援会の共同代表に糸数氏を据えたい考えで、近く糸数氏に正式に要請する予定だ。だが糸数氏自身は「後援会と相談しないと分からない」との態度を示しており「オール沖縄」陣営の態勢づくりには不安材料も残る。

 また永田町でささやかれる衆参ダブル選挙が現実味を帯びた場合、「オール沖縄」勢力にとっては空白の4区を含めた選挙区を巡る各政党間の調整は難しさを増す。会見の呼び掛け人の一人である社民・社大・結連合の照屋大河会派長は会見で「(辺野古反対の)民意を無視する政府に力を合わせて勝たないといけない」と結束を呼び掛けた。「オール沖縄」勢力にとっては、社大党と糸数氏間のしこりをどれだけ解消できるかが選挙戦の行方を占う鍵となりそうだ。
 (吉田健一)