【記者解説】沖縄県内地銀3行決算はこう読む 過度な競争から一定距離 収益源の模索と経費削減が課題


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 沖縄県内3行の2019年3月期決算は、沖縄銀行と沖縄海邦銀行が増収増益で好調さを維持した。減収減益となった琉球銀行も、過去最高益だった前期からの反動減や政策的な判断の影響もある。日本銀行のマイナス金利政策が続く厳しい金融環境は変わらないが、貸出金利回りの低下ピッチは緩やかになり、銀行間の金利競争は底を打つ気配も見せている。オリオンビール株の売却益が入るという想定外のプラスもあったが、3行とも貸出金利息収入が増加するなど本業で一定の成果をあげた。

 貸出金利回りは、鹿児島銀行の沖縄進出や日銀のマイナス金利政策開始を受け16年3月期から17年3月期にかけて、琉銀が0・16ポイント、沖銀が0・23ポイント、海銀が0・18ポイントと大きく低下した。全国的にも金利低下傾向が続く中、県内地銀3行は貸出金のボリュームを拡大することで利回りの低下を補ってきた。

 日銀那覇支店の資料によると、国内銀行の県内店舗の貸出金は前年比5%を超える高い伸びが続いている。全国平均は2・5%ほどで、観光を中心に好調な県内経済には強い資金需要があると言える。

 しかし貸出金の増加は、自己資本比率の計算式の分母に当たるリスクアセットを増やし、自己資本比率の低下につながる。3行とも利回りを下げて融資先を拡大しようとする過度な金利競争から、一定の距離を置こうとしている。

 琉銀はVISAデビットカード加盟店業務など手数料収入を増やし、新たな収入の柱の一つに育てる方針だ。沖銀は融資相談へのスピーディーな対応などの「非金利価値」を提供することで適正金利を確保しようとしている。海銀は得意とする中小・小規模事業者への融資をさらに強化し、金利低下に歯止めを掛ける考えだ。3行とも19年3月期の貸出金利回りの低下幅は0・1ポイントを切っている。

 それでもマイナス金利導入の影響で、銀行の安定した資金運用先だった国債の残高は着実に減り続けており、新たな収益源の模索とともに経費の削減も各行の課題となっている。

 琉銀は既に支店の統合を進めており、採用を絞ることなどで行員数も減少させている。沖銀は19年度に那覇市内の店舗の見直しに着手する。海銀も店舗など物件費の見直しを進める方針だ。地域社会と密着した地銀として、顧客の利便性や満足度をいかに確保していくかが重要になる。

 景気は循環し、好調な県経済もいつかは後退局面に入る。地域金融機関として真価を発揮するべき場面に備え、3行が収益性を強化する取り組みを加速させていけるかが問われている。
 (沖田有吾)