【深掘り】「五輪テロ対策」隠れみの 際立つ米軍優先 改正ドローン規制法成立


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
埋め立て工事が続くキャンプ・シュワブ沿岸部。大型トラックから投入された土砂で海水が濁っている様子が確認できる=3月26日、名護市辺野古(小型無人機で撮影)

 改正ドローン規制法では米軍基地や自衛隊施設が小型無人機ドローンの飛行禁止対象区域に追加された。基地上空のドローン規制は米側から要請されたもので、自国の自衛隊以上に、米軍に手厚い改正内容となった。名目は五輪などへのテロ対策だが、軍事活動に対する監視の目をふさぐ狙いも透ける。広大な米軍提供区域が陸海空に存在する沖縄では、改正法に対し市民有志の抗議集会が予定されるなど危機感が広がる。

沖縄と溝

 改正案を巡る委員会での審議時間は、衆参合わせて6時間に満たなかった。委員会通過後に法案を採決した本会議では両院ともに討論はなく、瞬時に処理された。採決では政権与党の自民、公明に加え、国民民主など野党勢力の一部も賛成に回った。取材活動が大きく制約される懸念があるなどとして慎重な対応を求めた日本新聞協会や日本民間放送連盟、権利制限に懸念を強めている沖縄側との溝が際立った。

 野党議員の一人は改正案への反応が弱い理由として「五輪関係施設の追加がポイントだと思っていた」と話した。防衛関係施設の追加を知り「こっちが本丸だった」といら立ちを隠さない。別の野党議員は「テロ対策だと言われると反対しづらい」と空気感を語った。

自衛隊より優遇

 政府は米軍施設周辺で小型無人機を飛ばすことを「米軍の航空機との衝突などにつながる恐れがある大変危険な行為」だと説明してきた。実際、小型無人機を回避するために経路を変えたこともあるという。こうした事情から、米側が法規制を要望していた。

 一方、空中で衝突する可能性があるとしながら米軍機の飛行を日本政府は一切、規制できていない。玉城デニー知事は独自の調査に基づき、他国では米軍基地の受け入れ国が米軍機の飛行を規制できているとし「日本も同じように米軍に国内法を適用させ、自国の主権を確立する必要がある」と指摘する。政府はこの状況を改善しないまま、国民による小型無人機の使用を法改正で規制した。一方的に米軍を優先した形だ。

 その結果、政府は自国の自衛隊よりも「優遇」する形で、米軍に提供している土地・水域・空域全てを規制対象区域とする改正法を成立させた。17日の成立を受け防衛省は飛行禁止区域の指定に本腰を入れる。 

 防衛省関係者は「優先度の高い所から指定する」と話す。米軍専用施設や提供水域・空域が集中する沖縄が真っ先に検討対象になるとみられる。名護市辺野古の新基地建設現場も、隣接する米軍キャンプ・シュワブの水域に含まれており飛行禁止区域に指定される可能性が高い。先の防衛関係者は「悠長に構えるつもりはない」と語った。

(知念征尚、明真南斗)