心臓にある右側の弁などの形態に異常があり、うまく機能しない先天性の心疾患「エブスタイン奇形」を患った男児が、生後17日で沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(南風原町)で手術を受け、順調に回復している。最も正常に近い形態に弁を作り直す「コーン手術」に成功。担当医によると、新生児期でのコーン手術の成功は県内初で、世界的に見ても報告数は少ないという。
先天性の心臓病は生まれてくる子どもの1%ほどに発症し、県内では年間、約150人と推計されている。手術を担当した小児心臓血管外科部長の西岡雅彦医師によると、エブスタイン奇形は全ての先天性心疾患の中でも0・5~1%ほどの珍しい病気だという。右心室の血液が右心房に逆流し、心臓が拡大してポンプ機能の低下だけでなく肺機能の低下まで招く。重症の場合は新生児期を乗り越えられずに亡くなってしまう。
今回のケースでは妊娠中期におなかの子がエブスタイン奇形の重症型と診断された。体内に水がたまる「水腫」が確認されたため、36週目の昨年12月18日に帝王切開で出生。NICU(新生児集中治療室)で内科的な治療を受け、ことし1月4日にコーン手術を受けた。術後は順調で既に退院している。
コーン手術は異常な位置にある弁を全てはずし、正しい位置に縫い直すもので、患者のQOL(生活の質)に大きく寄与する。成人や学童期での報告は見られるが、新生児期での成功の報告は世界でも十数例しかない。西岡医師は「今の心臓の手術は救命だけでなく、その後のQOLを考えて実施することが多い。新生児にもそれができるような時代になってきている」と指摘する。
豊見城市に住む男児の母(32)は、病名を告げられた時のことを「聞いたこともない病気。まさかと思った」と振り返る。「妊娠期から全てサポートしてもらった。沖縄でこれだけの手術が受けられるのはありがたい」と話した。