米海兵隊太平洋基地(MCIPAC)が在沖海兵隊の施設周辺での小型無人機ドローン飛行に難色を示したのは、米軍の運用上の機密性を維持するためだ。規制の主目的はテロ対策だが、テロとは無関係の辺野古埋め立て工事の取材時のドローン使用についても「運用や安全に影響を与えない場合は承認されるかもしれない」と許可に消極的な姿勢を示しており、「安全」を隠れみのにして、反対が根強い基地建設の現場の撮影を規制しようという思惑が透ける。
政府が規制の対象とするのは米軍施設とその周辺300メートル、提供空域、提供水域。具体的な対象区域は米側と協議するとしているが、本紙の取材に応じた海兵隊に関しては、陸上の提供施設だけで県内の米軍施設面積の7割弱を占めており、広範囲にわたって規制される可能性が強い。
辺野古新基地建設を巡っては、報道各社が辺野古新基地建設の進捗(しんちょく)状況を取材するためにドローンを飛行させてきたが、飛行場所はほとんどが米軍の提供水域上空だ。キャンプ・シュワブ沿岸の提供水域は沖合約10キロまで広がる面積約115平方キロと広大で、ドローンの飛行が規制されてきた「第三者や第三者の建物、車などから30メートル未満」という規定に抵触することはほぼなかった。
だが、改正ドローン規制法では提供水域上空も飛行禁止の対象となるため、今後は米軍の意向を尊重した日本政府が改正法を根拠に厳しく報道を規制する可能性が強い。
陸上施設とその周辺300メートルを規制区域としたことについて政府は根拠を示していない。米軍は「地域社会や住民の安全」も規制の理由に挙げるが、所属機の墜落や部品落下などで県民の安全を脅かしてきた当事者であり、説得力に欠ける。
さらに米軍が否定しなかった妨害電波の発信など対ドローン防御システムによって、民間のドローンが制御を失って墜落するなどの事態が発生すれば、住民の生命と財産をより危険にさらすことになる。
民主主義の根幹をなす国民の知る権利を守るため、日本政府には米軍への過剰な配慮ではなく、当初要請した報道への配慮に米側が真摯(しんし)に応じているか注視し、粘り強く協議することが求められる。
(松堂秀樹)