「自分らしく生きていられる今は幸せ」と言えるまで LGBTを公表し活動するあっきーさん 広島から故郷・沖縄に「希望の種」を届ける


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 セクシャルマイノリティーを含む誰もが自分らしくいられる居場所「コミュニティスペースここいろhiroshima」を広島県で主宰するあっきーこと當山敦己さん(27)=宜野湾市出身=が6月8日、沖縄県内で里帰り講演会を開く。活動では自身の性同一性障害を明らかにしているが、沖縄の両親にはまだ伝えられていない。「怖いけど、さーちゃんと一緒ならできそう」。ここいろを共に運営する高畑桜さん(26)の存在を力に、両親を招いて「自分らしく生きられている今は幸せ」と伝える。

「自分らしくいられる場を」と大人も子どもも楽しむ毎月1回の「ここいろ会」=2019年4月、広島市内(當山敦己さん提供)

 女性として生きることに違和感があり、高校では男子用の制服を着て成人式でははかまをはいた。親から「女らしくしろ」と言われたり否定されたりしたことはない。が、理由を聞かれることはなく、自分から詳しく説明したこともなかった。どれだけ理解してもらえるか不安で、伝える機会をつくれないでいた。

 県内の大学を卒業して2014年春に男性として就職。秋には家族に言わず裁判所で名前を変更した。16年秋にはタイで子宮と卵巣の摘出手術を受けた。その時も「遊びに行ってくる」と出た。帰国後、一人で戸籍の性別変更をした。

 大きな決断を支えたのは友人たちだ。「みんなと同じにできない」と将来が見えず、生きる価値さえ揺らいでいた大学時代。付き合っていた彼女に「自分で壁をつくっている。私はあなたを一人の人として見ているのに」と叱られた。はっと気付かされ、信頼していた先輩に「将来は男として生きるかも」と打ち明けた。

 「そうなんだ」。予想通りの言葉には続きがあった。「人と違うのは魅力じゃん」。罪悪感さえ感じていた自分に「魅力」との言葉は「衝撃だった」。さらに「堂々と生きたら他の人の励みになる」「自分は味方だから」と言われて吹っ切れた。怖くて近づけなかったカウンセリングに行き、性同一性障害の診断も受けて「生き方が180度変わった」。それでも「悩ませてしまうかも」と親にだけは話せなかった。

「ここいろhiroshima」として活動する當山敦己さん(左)と高畑桜さん=2018年12月、広島市内(當山さん提供)

意気投合

 新しい場所で自分らしく生きたいと15年、退職して沖縄を離れた。縁があり定住を決めた広島県で17年、レズビアンを公表するさーちゃんに出会った。

 さーちゃんも家では伸び伸びと育てられたが、社会の中で知らず知らずに“みんなと一緒でなければ”との型にはめられていた。同性に恋愛感情を抱く自分を「人と違うのはいけない」と押し込め、苦しんだ。

 あっきーさんと出会う直前、両親に打ち明け「あなたがあなたらしくいることが、自分たちの幸せ」と受け止めてもらった。「自分がどうあっても応援してくれると分かった瞬間、力が湧いた」

 応援してくれる存在に気付けば力が出る。その実感を持つ2人は「誰にとっても大切なのは自分が自分らしくいられること」「LGBTは自分の一部分にすぎない。ラベルを見るのではなく、目の前のその人自身を知ろう」と意気投合。「子どもたちが自分らしく過ごせる場所をつくりたい」と「ここいろhiroshima」を結成した。

安心・安全な場所

 「誰も来なければ2人でお茶しよう」と恐る恐る催しを開くと、反響は予想以上。口コミで評判は広がり、月1回の催しには参加者やボランティアなど合わせて常時15人ほどが集まり、今月で14回を数えた。

 一つの要素として“LGBT”を掲げるが、目指すのは誰にとっても安心・安全な場だ。生きづらさを感じる人が、何をしても、しなくても、望むように過ごせるように。そんな場には子どもを中心に年齢も個性も多様な人たちが集う。

 参加者が希望を出し合い、寒い時期は室内で料理やゲーム、暑い時期は動物園や水族館へ。「自分らしく楽しむ姿を見せないと」とスタッフは本気で楽しみ、終了時間が近づくと「もっといたい」「次はこんなことがしたい」などの言葉があふれるという。

 初の沖縄講演の大きな目的は、まずはあっきーさんの両親、友達など支えてくれた人々に気持ちを伝えること。そして、仲間の存在に気付き「自分らしく生きていい」と思えるようになった言葉をくれた人がいる沖縄に、今度は自分が「希望の種」を届けること。さーちゃんと2人で緊張しながら当日を迎える。

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 講演は6月8日午後2~4時、浦添市産業振興センター結の街。参加料千円、高校生以下無料。詳細、申し込みは「ここいろひろしま」のHPまで。
 (黒田華)