【深掘り】「異例の早さ」ゆいレール3両化前倒し 実現のカギは?


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沖縄都市モノレール

 ゆいレールの3両編成化を促す措置として宮腰光寛沖縄担当相は31日、補助率を8割に引き上げるなどの支援策を発表した。

 玉城デニー知事らによる4月の要請から1カ月余り。8月末にまとまる概算要求の3カ月前という「異例の早さ」(内閣府関係者)でまとめた背景には、モノレール社側が2030年とする3両編成化の時期を前倒しするべきだとの認識がある。

 「3両化は喫緊の課題だ。国の財政上の特段の支援が行われる趣旨を十分踏まえ、一日も早い3両化に向けて最大限の努力をしていただきたい」。

 宮腰大臣は31日の会見で関係者の奮起をうながした。

■異例の早さ

 内閣府は今夏の概算要求で早速、支援策を制度要求する方針だ。モノレール社の検討結果を踏まえ概算要求に臨む考え。関係者は「支援策が遅れれば会社側の検討も遅れる。早く導入に向けたスケジュールを作ってほしい」と早期公表の意図を話す。

 ゆいレールは10月1日に浦添延長区間が開業するほか、来年には那覇空港で第2滑走路の運用が始まる。ラッシュ時を中心に輸送力を超える懸念も頭をもたげている。関係者は「本来は3年前から検討するべき話だ。スケジュールの短縮化が中途半端なら、この事業はなかったことにすることもあり得る」と話し、迅速な対応を求めた。

■地元負担も

 3両化の投資にはモノレール社による一定の負担が欠かせない。だが経営は単年度黒字になったものの債務超過が続き、金融機関から多額を借り入れての投資が難しい状況だ。そこで政府は、県や沿線自治体がモノレール社を財政的に支援し、同社が資金調達計画を立てて車両を発注できることを事業の事実上の条件にする方向だ。

 中でも有力視されているのが、債務を株式化する「Debt Equity Swap」(DES)と呼ばれる手法だ。

 県や自治体はモノレール社に多額な資金を貸し付けているが、これを株式に転換し借入金を資本金に振り替えることで、経営のバランスシート改善につながる。内閣府関係者は、社側が債務超過の解消を現在、25年としていることを念頭に「(3両化を)30年をめどにするなら債務超過は既に解消しており、3両化は会社で投資すべき話になる」と指摘。モノレール社の投資と国の高率補助をセットにした資金調達で早期の3両化導入ができると意義を語った。

■地元も汗を

 自治体がDESを活用して貸付金を株式化すると企業の経営に一定の関与ができる一方、資金が返ってくることが見込めなくなる。実施に当たっては議会を通す必要がある。

 県幹部の一人は「厳しいスケジュールだが頑張らないといけない。制度要求されるのに『できない』とは言えない」と気を引き締める。浦添市の幹部は市の負担について「急に降って湧いた話だ。議会の反発はあるだろうが、県と那覇が賛成なら、浦添だけ反対とは言えない」と話し、議論には曲折も予想される。

 車両基地の土地の確保など課題も残る。需要の急増が見込まれる中、3両化の早期実現に向け緊迫した調整が続く。(知念征尚、真崎裕史、吉田早希)