高校中退の脳科学博士・濱田太陽さん 「道を閉ざされそうになっても未来への目標を持っていれば大丈夫」


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沖縄科学技術大学院大学(OIST)で博士号を取得し、講演する濱田太陽さん=5月26日、那覇市東町

 脳科学分野の研究を続ける鹿児島県奄美市出身の濱田太陽さん(30)が沖縄科学技術大学院大学(OIST、恩納村)で博士号を取得した。高校中退という挫折を経験しながらも学究の高みに達した。先月26日には那覇市で記念講演会を開き、「単なる研究ではなく、新しいテクノロジーを作って沖縄に貢献したい」と学びやのある地への恩返しを誓った。

 濱田さんは地元の中学を卒業後、鹿児島市内の高校に進学したが中退。その後、高校卒業程度認定試験(旧大検)を突破して早稲田大学人間科学部に入学を果たした。在学中に脳科学と人工知能(AI)の融合を図る研究をしているOISTの銅谷賢治教授を知り、研究室に加わった。

 研究対象は、脳内で働く神経伝達物質「セロトニン」。厚生労働省調査では「約15人に1人が一生に一度はかかる」とされるうつ病への効果も期待される物質で、「セロトニンが脳のどの領域を制御するのかが主な研究課題だった」と説明した。

 卒業後の5月から拠点を東京に移し、AI技術を開発する会社で研究とビジネスの融合という新たなテーマに挑んでいる。

 人間関係の問題で高校を中退した経験があるだけに、既存の教育システムから外れた子どもたちに伝えたいことがある。「道を閉ざされそうになっても、周囲との関係を保って未来への目標を持っていれば大丈夫。自分が気づけたことを他の誰かにも伝えていきたい」。次代に希望をつなぐ努力を続けるつもりだ。
 (安里洋輔)