2020年度から始まる新大学入試で英語の試験が大幅に変容するのを目前に控え、学校現場では英語の授業の改善に向けた試行錯誤が続いている。英語の入試は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測る民間試験も導入されることになり、読んだり聞いたりして英語を理解するこれまでの授業に加え、「話す力」の育成も求められている。教員が独自に授業の改善に努めているほか、県教育委員会も「県英語教育改善プラン」に基づき、教員の指導力向上に取り組んでいる。
■専門家に学ぶ
「hot」「hat」「hut」―。
5月31日、宜野湾高校で発音に特化した英語の授業があった。授業を受けたのは新大学入試に挑戦することになる文理特進コースの2年生。日本語の発音を表記するといずれも「ハット」だが、「ア」の発音の違いで「暑い」「帽子」「小屋」と意味が変わる。生徒は日本語にはない発音に困惑しながらも徐々に聞き分け、言い分けられるようになった。
授業したのは言語学博士で英語の発声に詳しい関東学院大学名誉教授の御園和夫氏だ。御園氏は「LとRの発音は、日本語で言うとイとエくらい違う」と、言い分けることの重要性を強調。話す力を養うために、英文を理解した後に自分の声を録音して聞き直す勉強法を教えた。生徒は「さっそく取り入れたい」と目を輝かせた。
クラスを受け持つ大城桂子教諭は「沖縄の英語教育を考える会」に所属しており、会のつながりで御園氏に授業を依頼した。大城教諭は「入試改革で生徒も戸惑っていると思うが、現場の先生も同じように授業づくりで悩んでいる。御園先生の授業は参考になった」と話した。
■改善プラン
県教育委員会は「県英語教育改善プラン」に基づき、授業の改善を支援。プランはスピーキング・ライティングに特化した「パフォーマンステスト」の実施回数や教員向けの研修実施回数などの目標値を年ごとに定め、段階的に教員の指導力向上を目指している。
悉皆(しっかい)研修を5年で行う計画は最終年度を迎え、本年度で約390人いる県立学校の英語教員全員が受講することになる。この研修は文部科学省の委託を受けたブリティッシュ・カウンシルの研修に毎年数人を派遣し、英語4技能の指導法について研修を受けた教員が、その他の教員向けに研修して共有する仕組みだ。これにより、教員の授業における英語使用状況は大幅に改善し、18年は前年比13・5ポイント増の61・2%に上昇。より実践的な授業づくりが浸透してきている。
プランでは中高連携の公開授業などにも力を入れている。今後は小中高、小中高大へと連携の幅を広げ、一貫した英語教育のあり方を模索する予定だ。県教委の担当者は「これまでの枠組みの中でどうやって改善できるのか、考えながら取り組んでいる」と話した。
(稲福政俊)