【ニュース透視鏡】「そんな意識だから事故を繰り返す」沖縄県幹部が怒り 「米軍はどうにもできない」とぼやく政府関係者


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沖縄防衛局の田中利則局長に抗議・要請書を手交する松本哲治浦添市長(右から2人目)ら=6日、沖縄防衛局(浦添市役所提供)

 米海兵隊CH53E大型ヘリコプターが浦添市の浦西中学校にゴム製テープを落下させた。在沖米海兵隊は関与を認めたが「脅威はない」と開き直り、県からの呼び出しを断った。政府は米軍が既に対策を講じていることなどを理由に飛行停止を要求しておらず、早期の幕引きを図ろうとする思惑もにじむ。

 一方、松本哲治浦添市長は6日、緊急で沖縄防衛局を訪れて再発防止などを求めた。県は7日に謝花喜一郎副知事が米軍や防衛局などに抗議し、現場も視察する方針だ。繰り返される事故に対して米軍の安全管理や整備体制を問題視する沖縄側と米軍・日本政府の温度差が際立つ。

「脅威及ぼさない」

 沖縄防衛局は5日、浦西中への落下物を持ち込むと、米海兵隊はその日のうちに所属機が落下させた部品であることを認めた。浦添市幹部は「こんなに早く認めるとは思わなかった」と驚いた様子を見せた。

 しかし、海兵隊は「人や物に脅威を与えない」と断言。落下を認めた後も事故を起こした機種を含めて訓練を続けている。6日、詳細な原因を尋ねる本紙の取材に対し、改めて「脅威は及ぼさない」と強調した。

 米軍が安全性を強調したことに、県幹部は「話にならない」とため息をつき、「飛行物体から部品が落ちるというのは危険極まりない。とんでもない」と指摘した。別の県幹部も「落下させた当事者が言ってはいけないことだ。そんな意識だから事故を繰り返す」と話した。

及び腰の対応

 2017年12月に宜野湾市立普天間第二小学校であった米軍ヘリの窓落下事故を受け、日米両政府は学校上空の米軍機の飛行を「最大限可能な限り避ける」と合意した。防衛省は「米軍の行動は担保される」と胸を張った。

 だが、その後も学校上空での米軍機飛行がたびたび確認された。そして今月4日、学校内での部品落下事案が発生した。

 浦西中学校での部品落下に関する質疑があった6日の衆院安全保障委員会では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の秋田県への配備を巡り、岩屋毅防衛相が防衛省の調査に誤りがあったとして「大変申し訳ない」と陳謝する場面があった。

 日本政府内の問題では「再発防止を徹底する」と強調してみせるが、米軍が相手になると「再発防止を申し入れる」との対応に終始。国民の生命や財産を守る責務を半ば放棄したような及び腰の対応が浮き彫りになった。

 部品落下の再発は防げるのか。政府関係者は「自衛隊ならまだ指示を徹底させられるが、米軍はどうにもならない」とぼやいた。
 (當山幸都、明真南斗)