「ヘリが近づくたびに避難する学校が、沖縄以外にありますか?」 子の安全を願う声が届かない沖縄の現実


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浦西中学校上空を低空飛行する米軍のMV22オスプレイ=11日午後、浦添市当山

 【浦添】「ヘリが見えたら避難する」「今度は大事故が起きるのでは」。浦添市立浦西中学校に米軍ヘリのゴム製テープが落下した事故から、11日で1週間がたった。生徒らは今も屋外活動を制限され、米軍機は学校上空を飛び続けている。「せめて学校の上は飛ばないでほしい」。その願いさえ届かぬ現実に、保護者の間には怒りや不安、焦りが交錯している。

 落下事故とちょうど同じ午後3時半ごろ、生徒らの下校が始まった。この日はテスト期間前で部活動がなかったが、事故後の屋外活動は「米軍ヘリが接近したら中断し、屋内退避する」がルールとなった。

 「ヘリが見えるとキャプテンが『全員、屋根のある所に逃げろ』と号令を掛けた」と話すのはハンドボール部の2年男子。「また何か落ちてくるんじゃないか、と不安。今後もずっと避難しないといけないのかな…」。2年女子は「自分の学校に落ちてくるとは思わなかった」。事故後は「常に不安」と言い「近くを飛ばないでほしい」と訴えた。その数分後、米軍ヘリがごう音と共に学校上空を通過していった。

 事故後、米側はテープ落下に「危害を与えるものではない」と強調し、飛行を続行した。PTA会長の大城保さん(52)は「落下自体が問題だ。落下物が違ったら、大事故になった可能性もある」と話す。「子どもを送り出す時、不安がある。一日も早く学校を飛行ルートから外してほしい」と訴えた。

 保護者の間には、諦めにも似た感情が漂う。子ども2人が浦西中に通う女性(40)は「命に関わる事故でもないと、聞いてもらえないのか。大事故が起きてからでは遅い」と嘆息した。

 中学1年の娘がいる女性(42)も「次は沖縄国際大みたいに墜落してもおかしくない」と危機感を強める。「本当は普天間飛行場の運用停止を求めたい。それが難しいなら、せめて学校上空は飛ばないでほしい」と話し、こう強調した。「ヘリが近づくたびに避難する学校が、沖縄以外にありますか? こんな危険な環境にあることを、多くの人に自分の問題として知ってほしい」 (真崎裕史)