【記者解説】PFOSの水質目標値を定めても残る課題


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 北谷浄水場の水源から有機フッ素化合物PFOSなどが高濃度で検出されている問題で、厚生労働省は12日、県の要請に対し、同物質の水道水中の濃度に関する目標値を設定する方針を示した。水道水の安全性に県民の不安の声が上がる中、県はその説明材料にできる指標を求めてきたため、県側にとっては一歩前進と言える。ただ目標値は法的な順守義務までを課す水質基準とは異なる。PFOS汚染は全国的な問題にはなっておらず、米軍基地との関連が指摘される特殊な地域事情が壁となり、水質基準が適用されないからだ。

 仮に水道水中の目標値が設けられた場合でも、PFOSの汚染源が米空軍嘉手納基地だと指摘されている以上、根本的な解決には至らない。米軍は汚染調査に関する県の立ち入りを拒んでおり、汚染源の特定と除去が進んでいないからだ。県企業局は北谷浄水場で粒状活性炭を使って濃度を下げる対症療法をしている。

 水道水中のPFOS濃度について県はこれまで、国内には基準が存在しないため、米国環境保護庁(EPA)の生涯健康勧告値である1リットル当たり70ナノグラムをひとまずの参考値としてきた。

 ただ米国内でもEPAより厳しい基準を設定している州もある。逆にイギリスやドイツの基準は米国よりも緩い。どの程度の濃度が健康被害を招くのか明確な国際指標がない中で、国側で今後、どう議論が進むのかが注目される。米軍基地問題に関わるだけに政府が米国に「忖度(そんたく)した」と疑念を生まないよう、設定プロセスの透明性も求めらそうだ。
 (島袋良太)