【経済アングル】ゆいレール3両化の早期実現に必要なことは?


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 ゆいレールの3両化に向けて、総事業費と費用負担の概算が沖縄都市モノレールの株主総会で示された。宮腰光寛沖縄担当相が5月31日に補助率引き上げを発表してから半月もたたずに発表され、スピード感が際だった。

 通勤、通学客や観光客の増加により、ゆいレールの乗客数は年々増加する。30年度には1日平均7万5千人までの増加が予想される。特に朝のラッシュ時は混雑が顕著で、輸送力の増強が求められていた。

■政府の後押し

 関係者によるとモノ社側は当初、車両基地の整備を優先して3両編成導入には5年程度かかると見込んでいた。だが、延伸区間の開業や那覇空港第二滑走路の供用開始など需要の急増が見込まれる中で「動きが遅い」と懸念した政府側が動いた。補助率引き上げなど3両編成導入に向けた環境を整備し、モノ社を後押しした。政府関係者は「これからは地元が汗をかく番だ」と話した。

■3者の調整加速

 モノ社の示した負担案では、約280億円の総事業費のうち約45億円を県、那覇市、浦添市の3者が負担する。浦添延長の際は県が50%、那覇市が43%、浦添市が7%を負担しており、今回も同様の割合をベースとすることで認識はおおむね一致している。

 モノ社の27億1700万円の債務超過解消に向けた県、那覇、浦添の負担割合については、今後の調整事項となる。県と那覇市はそれぞれ約83億円をモノ社に貸し付けており、DES(貸付金の株式化)による支援を求められている。貸付金のない浦添市は出資をする見通しだ。最終的な負担割合は決定していないが、県が5割を負担する見通しだ。那覇と浦添の負担割合について那覇市の幹部は「人口割にすべき」との考えを示す。

■キックオフ段階

 DESには議会の同意が必要になる。那覇市の久高将光副市長は「市民、県民、観光客のために3両化は必要だ。相応に負担はしないといけない」と語る。浦添市の大城千栄美副市長は、出資などの支援について「(モノ社が)中長期的な計画をしっかり示した上で『これだけ負担してほしい』というのが筋だ。そうじゃないと市民、議会に対して説明できない」とし、早期の提案を求めた。

 モノ社の債務超過の解消は、需要喚起策など新たな取り組みを積極的に進める上でも有効となる。関係者は「今回はキックオフだ」と話し、3両化の早期実現に向け自治体間の調整などを加速することが必要との認識を示した。
 (沖田有吾、知念征尚、伊佐尚記、真崎裕史)