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コンクリート住宅ばかりだった沖縄に〝異変〟 不動産投資(5)〈熱島・沖縄経済〉41


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
本島南部に建築中の木造住宅。建築コストの安さや品質の向上で、コンクリート造が多かった沖縄でも木造住宅が存在会を増している=5月8日

 コンクリート造がほとんどを占めていた沖縄の住宅建設に変化が生じている。地価と人件費が上昇し、建築資材も高額化しているためコストの安い木造住宅への関心が高まっている。

 沖縄では戦後の米国統治時代にコンクリート住宅が広まった。沖縄戦で野山が焼かれ、戦前のような住宅建設に必要な木材を確保することが難しかったため、米軍が木材を持ち込み応急住宅を建設した。しかしシロアリに弱いベイマツで、さらに仮設構造のため台風で大きな被害を受けたこともあり、住民からの評判は良くなかったという。

 B円体制下では杉材を日本から安く輸入できたこともあり木造住宅が多く造られたが、価格差が縮小するとコンクリート造が多くなり、台風耐性を求める県民のニーズもあり住宅建設のほとんどを占めるまでになった。

 しかし近年では、コストや品質面の向上により、木造住宅が再評価されている。県木材協会の資料によると、県内では2001年に一戸建てとテラスハウスなどの長屋建てが合計で3964戸建築されたが、そのうち木造は153戸、3・9%と数少なかった。しかし2018年は合計3719戸のうち木造は1330戸で、35・8%を占めている。さらにアパートなどの共同住宅も木造が297戸建築されている。

 前専務理事の嘉数尚廣氏は「鉄筋コンクリート造と比べ、コスト面で坪当たり10万~20万円くらい安い。技術の向上で台風やシロアリにも強くなっているので、かなり増加している」と話す。将来的に、木造住宅が半数以上を占める県外並の水準まで達する可能性もあるという。

 07年に設立したアースティック那覇は、鉄筋コンクリート造が圧倒的に多い中で木造住宅に取り組んだ。セミナーで利点を説明して普及を図り、今では年間平均で木造住宅50戸程度を建設している。石松完治社長は「木は単価が安く長持ちするだけでなく、塩害にも強い。調湿力も高く、沖縄には本来とても適している」と長所をあげる。

 買う側の意識も徐々に変化し、木造に抵抗感を抱かない世代が増えている。同社の施工で本島南部に木造住宅を建築している40代の男性は、当初鉄筋コンクリート造も選択肢にあったというが「建築単価の違いは大きな要素になった」と話す。

 急激に増加する一方で、購入者側も含め木造住宅についての知識や理解はまだ不足している部分がある。石松社長は「万一何か事故が起こった時に、やはり木造はだめだとなってしまうのが怖い。買う側もしっかり話を聞いて、木造のメリットとデメリットを理解することが必要になる」と指摘した。

(「熱島・沖縄経済」取材班・沖田有吾)

(琉球新報 2019年6月5日掲載)