くらし

苦しみ知る親、支援者になれる SOS出す勇気持って 「引きこもり」考える(中)

引きこもり支援を続けるアトリエみらいの東邦治理事長=5日、名護市のアトリエみらい

 沖縄県名護市の一般社団法人アトリエみらいの東邦治理事長(70)は実子の引きこもりをきっかけに家族会をつくり、本島北部を中心に当事者や家族を訪問して寄り添う。「立ち直ることはできる。苦しみを知る親は素晴らしい支援者になれる」と外に目を向けるよう呼び掛ける東さんに聞いた。 (聞き手・黒田華)

 ―引きこもる人たちはどんな状態か。

 「いじめや、社会に出回る暴力的な言葉に傷ついたり、発達障がいなどのためコミュニケーションにつまずいたりして、外界が怖くなってしまった人たちだ。怠けや甘えでも、しつけの問題でもなく、誰もがなり得る状態だ」

 「引きこもる子どもが親に暴力を振るうのは、何とかしてほしいという気持ちの表れだ。自分の苦しさをなぜ救ってくれないのかと心では泣いている」

 ―どのように対応すればいいか。

 「禁句は仕事、結婚、将来、同級生の話題。仕事をして家庭を持つ同級生が評価されていることも、自分のために親が苦労していることも分かっている。できなくて苦しんでいる人を『なぜできない』と追い詰めてはいけない。『自分にできることは他人もできる』と考えず、その人にはその人の人生があることを認めてほしい」

 「行き詰まった家族には第三者が介入して風穴を開ける必要がある。暴力がある場合は子どもから離れた方がいいこともある。抱え込んでしまう家族は多いが、私は子どもの引きこもりを公言したことで支援してくれる人が増えた。カミングアウトは怖くない。親にできることはプライドを捨てて相談することだ」


 ―支援で重視するのは。

 「まずは親支援だ。自分もそうだったが、親は外出先でも、子どもが自傷してないか、母親に暴力を振るっていないか、いつも頭の片隅で気になって集まりからも足が遠のいて孤立していく。親の会に来てもらえれば『自分だけではない』と肩の荷を下ろし、苦しみを吐露できる。すぐに解決するわけではないが、諦めなくてよいことは分かる。子どもはずっと親を見ている。親が元気になれば、子どもは安心して自分のことを考え始める」

 「当事者本人には『この人なら分かってくれる』と思ってもらえるよう何年でも働き掛け続ける。信頼さえしてもらえれば、その先はいかようにも進む。就労などはその後の話だ。20歳前後が改善しやすいが、50代、60代でも変わり得る」

 ―当事者の親が支援者になることを勧めている。

 「『自分の子も解決できないのに』と私も言われたが、親子の感情がない分、他人の方がうまくいく。人助けができると苦しみは緩和され、頭が自分の子どものことだけではなくなり、笑顔が増える。自分の子は第三者に任せて、他人を支援する方がいい」

 「引きこもりは百人百様。多様なポケットを持った、たくさんの支援者が必要だ。素人判断しないなどポイントはあるが、難しく考えず困っている人を手助けする“おせっかいおじさん・おばさん”でいい。苦しみを知る親たちは素晴らしい支援者になれる」

 「支援者を増やすこと、外に出られるようになったときの居場所をつくることは車の両輪だが、個人的な活動には限界がある。公的な予算をかけてほしい」

 ―親へのメッセージを。

 「仲間はいるし成功事例もある。家庭内で解決しようとせずSOSを出す勇気を持ってほしい。『苦しいんだね。引きこもっていていいよ』と子どもを受容し、親は親で楽しんでほしい。親が変われば子どもも変わる」
 (次回は25日)