豚コレラ水際対策 沖縄の食文化に欠かせない豚を守れ 2頭の探知犬が那覇空港で活躍


この記事を書いた人 Avatar photo 米倉 外昭
渡航者の手荷物を嗅ぐ検疫探知犬のラスティー号=17日、那覇空港国際線ターミナル

 愛知県、岐阜県や海外で家畜伝染病「豚コレラ」の感染が止まらず、発生地域から多くの観光客が訪れる沖縄も病気の侵入リスクが高まっている。那覇空港では2頭の「検疫探知犬」が乗客の手荷物のにおいをかいで検査が必要な肉製品などをかぎ分け、職員に知らせて水際対策に活躍している。一方で県農林水産部は、侵入に備えて初動防疫作業の演習訓練を実施。事務職や水産職員も総動員して、肌を露出させない防護服を着用して危機管理に備えた。

 豚やイノシシがかかる豚コレラは2018年9月、26年ぶりに国内で発生した。強い伝染力でいまだに愛知県や岐阜県などで感染が広がる。中国や香港、ベトナムでは、別のウイルスが原因のアフリカ豚コレラが拡大している。特にアフリカ豚コレラは有効なワクチンが存在せず、殺処分しか手だてがない。

 侵入を食い止めるため、那覇空港では農林水産省動物検疫所の探知犬が活動する。飛行機から降りた乗客の荷物をかぎ、検査が必要なソーセージなどの肉製品などが紛れていないか確認。見つけるとハンドラー(指導手)に伝え、職員が検査する。

 国際線ターミナルでは17日、探知犬のラスティー号(雄、6歳)が上海から到着した客の荷物を確認した。人懐こい性格で「空港一のやる気と元気の持ち主」というラスティー号。冷静に荷物を次々と確認し、ターゲットを見つけると座って合図した。

ウイルス持ち出しを防ぐため、防護服の着用を練習する県職員ら=12日、那覇市松尾の八汐荘

 那覇空港には15年3月から2頭が導入された。沖縄支所は16年、荷物4千件を差し止めた。新堀均調整指導官は「もし侵入すると根絶は難しい。養豚業が大きな被害を受けないよう、水際で防ぎたい」と語る。

 県は侵入時を想定した初動対応へ準備する。那覇市内で実施された防疫演習では、県農水部の職員ら約80人が集結した。

 家畜衛生の専門職員が講師を務め、「防護服内にウイルスを付着させない」「農場外に持ち出さない」などの注意点を共有。殺処分や消毒に使う防護服を実際に着用し、手袋やゴーグルで肌の露出を防ぐことも確認した。県中央家畜保健衛生所の翁長友理子主任技師は「有事の際、現場は非常に混乱する。正しく着脱する訓練が大切だ」と話す。

 県畜産課防疫衛生班の津波修班長は「豚肉は沖縄の食文化に欠かせないが、1件でも病気が発生すれば流通が滞る。危機管理の重要性を認識する必要がある」と危機感を訴えた。
 (石井恵理菜、大橋弘基)