【記者解説】沖縄・地域安全パトロールの実態は? 1日200万円の血税で米軍事件再発防止の目的と乖離


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青色灯を点け、パトロールに出発する「沖縄・地域安全パトロール隊」の車両=19日夕、那覇市おもろまち

 2016年の米軍属による女性殺害事件を受け、政府が再発防止策として開始した沖縄・地域安全パトロール隊事業の目的と実態が乖離(かいり)している。約3年間の実績の4分の3が路上寝など泥酔者対応で、米軍関係は1%にも満たない。政府は犯罪抑止効果としての側面を強調するが、目的に沿って予算化する公共事業としての在り方に疑問を生じさせる結果となった。

 事業内容は強制力のある警察権はなく、自治会や学校保護者らがボランティアで実施している地域防犯パトロールに類似している。沖縄総合事務局によると、数字に表れない犯罪抑止効果があり、地域や学校から感謝の声が寄せられているという。ただボランティアのパトロールとは異なり、1日当たり200万円の血税が投じられている。

 公共事業は通常、限られた予算の中で最も効果的な事業内容か否か精査された上で実施される。事業の狙いに即して適切かどうかや、他の対策よりも優先されるべきかなど、発注者は絶えず検証する必要がある。政府のパトロール事業もその対象で、目的と予算額、効果を照らし合わせ、国民が納得できる事業実態となっているかが問われる。

 その検証・判断には事業の実態がつまびらかになることが必須で、政府には積極的な公表と説明が求められる。総合事務局は「米軍だけをターゲットにしている訳ではない」と説明する。確かに県内で問題となっている路上寝の対策としては一定の成果が出ていると言える。

 ただ、政府は16年の女性殺害事件を受け「再発防止」の看板で同事業を開始しており、米軍絡みの事件・事故が相次いでいる現状を鑑みると、当初の事業目的を達成しているとは言い難い。今回明らかになった事業実績は政府に抜本的な再発防止策を講じる必要性を改めて突き付けている。
 (明真南斗)