沖縄県高校野球きょう開幕 悲願の夏1勝目指すカトリック エースの復活に期待!KBC未来 注目のチーム紹介


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 第101回全国高校野球選手権沖縄大会が22日開幕した。約1カ月にわたり、全64校が熱戦を繰り広げる。2年前の創部メンバーが3年生になった沖縄カトリック。中学時代に日本代表に選ばれたが、高校ではけがに悩まされ続けたKBC未来の投手、伊波洋一。沖縄カトリックの歴史を刻んだ選手の思いと、完全復活でチームの躍進を担う伊波の決意を紹介する。

沖縄カトリック野球部の3年生のメンバーたち=20日、宜野湾市真栄原の同校

◆創部3年目の沖縄カトリック 最上級生、集大成に挑戦

 部として迎える、初めての“最後の夏”―。2017年4月、1年生13人のみで創部した沖縄カトリックの野球部。あれから2年弱。現3年生たちは自ら練習場を整備し、一から戦績を積み上げてきた。今大会、目指すのは夏の大会初勝利。初期メンバーが高校野球最後の大会で、部の歴史に新たな1ページを刻めるか。集大成に挑む。

 部の礎をつくったのは、現役だった豊見城高校時代、3度にわたり甲子園の土を踏んだ岸本幸彦監督。地域のチームを回って「甲子園を目指そう」と熱意を伝え、「監督についていこう」と集まったのが、現3年生たちだ。

 創部当初にまず始めたのは、同校第2グラウンドの草刈りと大きな石の除去だった。砂を運び入れ、マウンドも手作りした。狭く外野練習はできないが、創部半年後の秋季大会では強豪の嘉手納から公式戦初勝利を挙げ、「少しずつ自信が付いていった」(金城来南主将)。

 ただ、先輩がいない中で高い士気を維持するのは簡単ではなかった。試合に勝てない時期もあり、岸本監督は「彼らは先輩の3年生が負けて涙を流す姿を見たことがない。悔しい気持ちを伝えられず、『甲子園に行く』と言う私と温度差もあった」と振り返る。練習に熱が入らず、昨年の秋以降は練習試合も含めてほとんど勝てていない。

 それでも4月に1年生16人が入学し、最上級生となった3年生たち。新学期になってからの選手ミーティングで、誰からともなく声が上がった。「これが最後なんだ。頑張ろう」。お互いに奮起し合い、大会に向けて気持ちを高める。部員38人を率いる金城主将は「この1カ月でかなり締まってきた。夏に1勝を挙げたい」と気合十分。打撃中心のチームで4番打者を務める普天間朝基は「ホームランを打ってみんなを引っ張りたい」と腕をまくった。
 (長嶺真輝)

投手前の凡打を想定した練習に汗を流すKBC未来の伊波洋一(手前)=21日、糸満市の南浜多目的広場

◆KBC未来 エース伊波 ケガ乗り越えて成長

 鏡原中3年時にU15日本代表に選ばれたKBC未来の3年生エース伊波洋一が、けがを乗り越えてマウンドに立つ。昨年の春と秋はけがで出場できず、今年の春季は遊撃手として投手を見つめるのみ。「マウンドが一番楽しい。勝ち続けて長い夏を過ごしたい」。強力右腕が復活を期す。

 1年生からレギュラーだが、右腕が下がったまま左足を踏み込む投球フォームで右肘に負担がかかり、12月に痛みが現れた。1カ月後は練習で左肩を脱臼。4カ月後に練習を再開したが、フォームを改善しようと追い込んだ結果、昨年7月に再び右肘を痛みが襲う。「マウンドに立ちたい」。その一心で試合に出場し続けた結果、9月に右腕を疲労骨折して離脱した。

 「好きで野球をやっているのに、こんなに苦しまないといけないんだ」。理想とかけ離れた現実に自責の念が募ったが「自分にできることをやる」と、復帰を信じて走り込んだ。

 今年1月に投球練習を再開。外部トレーナーの渡嘉敷陣一さんとフォームを動画解析し、腕の力だけに頼らず、下半身の重心移動に重点を置いて投げることを意識するようにした。最速は143キロ。約半年で約10キロ伸びた。

 度重なるけがを乗り越えて「くじけない精神力がついた」。けがの間の下半身強化が奏功し、球威も増している。マウンドは昨年8月の県中央新人大会ぶりだが、苦境を糧に大きく成長したエースに揺らぎはない。「相手に対策されたとしても、その上をいけばいい」。自分自身の可能性を信じて、誰よりも長い夏へ挑む。 (古川峻)