[日曜の風]「老後2000万」問題 今の政治、正しいのか


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 金融庁が14日の衆院財務金融委員会で、老後に年金以外でかかるお金が2千万円という報告書について、「配慮に欠けていた」と謝罪した。

 なんに対しての配慮が欠けていたというのか? 金融庁が報告書を勝手に作ったわけでもなく、嘘(うそ)の数字を出してきたわけでもない。官僚による悪い忖度(そんたく)だとしかいいようがない。

 現在、無貯金の人は31%もいる。年金以外で2千万円かかるといわれ、驚愕(きょうがく)した人たちは多いと思う。実際、大規模なデモも起きた。

 その反応を見て、7月に参議院選をおこなう安倍自民がこれはよろしくないと思っただけ。火消しのためにあの報告書をなかったことにしたかっただけ。

 われわれにとって大事なことは、今の年金制度がこのまま保たれるのかどうかだ。老後の生活を年金に100%頼っている人も、頼ろうとしている人もいるだろう。すべてをとまでは考えていなくても、何割かの生活費として年金をあてている人も、あてにしようとしている人もいるに違いない。

 きゅうに制度が壊れました、ということはあってはならない。なぜならそれは、国民の命に関わるから。超少子高齢化で年金制度の維持が大変になるということは、今わかったことではない。今のやり方で不味(まず)いというなら、さっさと違うやり方を模索すべきだ。

 だいたい今回問題とされた2千万円という数字は、厚生年金加入者のための数字である。国民年金の人はその倍額はかかるといわれている。介護を受けるとさらに1千万円増すという数字も出てきた。未加入の人だっている。

 麻生金融相は報告書の受け取りを拒否し、正式に求めない理由として「国民に不安を与える」といっていた。国民に不安を与えるのは、むしろ政治家のそういう態度だろう。

 政治とは国民を飢えさせないために行われるものである。そのための話し合いさえないこの状況はおかしい。国会の予算委員会は与党側の抵抗により開かれていない。

(室井佑月、作家)