人通りが減った? 公設市場移転で人の流れに変化 小売業者に明暗 駐車場不足、アーケード撤去…商店街に課題山積


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シャッターの下りた第一牧志公設市場の旧市場=7日、那覇市

 第一牧志公設市場が建て替え工事に伴い那覇市松尾の旧にぎわい広場に一時移転したことで、周囲の人の流れに変化が起きている。1日に開業した仮設市場周辺の店舗は客足が増えた一方、旧市場周辺の事業者は「人通りが減った」と口をそろえる。工事に伴うアーケードの撤去や深刻化する駐車場不足も客足に影響すると懸念され、まちぐゎー(商店街)関係者は正念場を迎えている。

中心市街地の核

 仮設市場の建物は市が建設業者から借りている。3年間の賃借料は約4億4千万円。新市場は旧市場と同じ場所に総工費約26億8500万円をかけて整備する。市が巨額を投じるのは第一牧志公設市場を中心市街地の核施設と位置付けているからだ。

 仮設市場の開業に伴い、老舗菓子店「末廣製菓」は仮設市場の真向かいにあった車庫を店舗に改装し、移転した。旧店舗は新店舗から約20メートルしか離れていないが、経営者の下地玄旬さん(66)は「客足が以前より増えた」と喜ぶ。

 一方で旧市場はシャッターが下り、周辺の雰囲気がやや寂しくなったことは否めない。付近のかつお節店店主(47)は「人通りが少なくなり、いちげんさんはかなり減った」と顔を曇らせる。

駐車場が不足

 関係者をさらに悩ませているのが、周辺の駐車場の閉鎖が相次いでいることだ。客や事業者、商品を搬入する業者らの駐車場不足が深刻化している。かつお節店店主は「仮設市場を撤去した後の旧にぎわい広場や希望ヶ丘公園に市が駐車場を整備してくれたら」と希望する。

 旧にぎわい広場は市有地。仮設市場撤去後の跡地利用は今後、識者らを交えて議論されるが、市なはまち振興課の高宮修一課長は「駐車場だけに使うのはもったいないのでは」と指摘する。

 市は車に頼り過ぎず公共交通や徒歩、自転車などで快適に移動できるまちづくりも掲げている。高宮課長は「搬入業者の共同配送ができないか研究する必要もあるかもしれない」と話す。

 建て替え工事に伴い、市は旧市場の周囲3面のアーケードを撤去する。市は関係事業者への補償に加え、アーケード再設置に対する補助制度や設置基準などをつくって支援する。旧市場と水上店舗の間に設置されている市場中央通り第1アーケードの関係事業者らは再整備する予定だ。

 同通りで古書店を営む宇田智子さん(39)は「アーケードがなくなり工事が始まれば影響がもっと心配だ。今は踏ん張り時。市場が戻って来るまで、仮設市場も周辺事業者もそれぞれが頑張るしかない」と話した。
 (伊佐尚記)