興南が総合力で逆転 【高校野球沖縄大会準々決勝】


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仲間に指示を出す興南の捕手・遠矢大雅=15日、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇(田中芳撮影)

 興南が高い修正力を発揮した。初回に今大会初の失点を許し、打線がつながらない展開にも動じなかった。「諦めなければチャンスはくる」という我喜屋優監督の声掛けを信じて耐え、中盤に相手投手を攻略。勝負どころの集中打で逆転すると、安定した守備陣が反攻をぴしゃりと絶った。

 球の出どころが見えにくい横手投げの宜野湾主戦、宮平陸の切れのあるフォークに序盤から内野ゴロが目立った。そこで我喜屋監督が出した指示は、ボールになる低めの変化球を見切り、次の球を狙うこと。チーム内で言うところの「1球の間」だった。

 コースの見切りを修正した打線は、甘い球をシャープに捉えだす。六回、勝連大稀がこの試合でチーム初のクリーンヒットを放つと、そこから3連打で1得点。勢いは止まらない。スクイズによる同点を挟み、打席には捕手の遠矢大雅。「(マウンドの)宮城(大弥)が頑張っていたので、楽にさせたかった」。女房役の温情たっぷりの一振りで右中間へ運び、逆転に成功した。

 殊勲打の遠矢は守備でも貢献する。直後の七回表、無死一塁でのバントを二塁で刺し、流れを渡さない。リードでは宮城の最速146キロの直球を主体に押し切った。「逆転で勝てたことは次につながる」と遠矢。苦しい展開から勝ちをもぎ取った自信を胸に準決勝に臨む。

 (長嶺真輝)


◇宜野湾、一打に泣く

 24年ぶりに8強入りの宜野湾。宮平陸の好投もあって第1シードを向こうに回し中盤まで先行したが、六回裏に潮目が変わった。

 1死一、三塁で興南の知念勇気がたミートした打球が宮平の左足に当たった。捕球に入る遊撃手の見立てとはボールの動きが変わり、一人が生還。「併殺で終わりと思ったが、あれで流れが変わった」(池宮城朗監督)。連打を浴びて逆転を許し、逃げ切られた。

 打線は興南の宮城大弥に14三振を奪われ、池宮城監督は「イン攻めは分かってたけど、そのはるか上を行かれた」と相手エースに脱帽した。

 ただ、少ない好機で2点を奪い、横投げの宮平は緩急で打者をほんろう。「やるべきことをやる」というテーマを体現した。先制打も放った宮平は「悔しいです」と言いながら高校野球は「充実していた」とすがすがしい表情。後輩には「ベスト4に入って歴史を作ってほしい」とエールを送った。