7月21日に投開票された参院選沖縄選挙区は「オール沖縄」勢力が推す無所属新人の高良鉄美さん(65)が、自民新人の安里繁信さん(49)=公明、維新推薦=との事実上の一騎打ちを制した。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設反対を掲げた高良さんの大差の勝利により、昨年の知事選、今年の県民投票と衆院3区補選に引き続き、改めて示した「新基地ノー」の民意。高良さんは「この1年間で4度示した民意は大きい。この民意をバックに論戦に挑みたい」と意気込み、新基地建設阻止を誓った。
投票箱が閉まった午後8時ちょうどに「当確」を知らせるテレビの速報が流れた。玉城デニー知事らがいち早くガッツポーズする横で、身を乗り出して画面を凝視する高良さん。隣では妻の克美さん(60)が支援者からもらったというペンダントを握りしめる。自分の目で確認すると克美さんと目を合わせ、ようやく立ち上がって支持者らに頭を下げた。玉城知事に促されて勝利のカチャーシーを舞うと、支持者は指笛や拍手で合いの手を入れて喜びを分かち合った。
憲法学者として35年間、琉球大学の教壇に立ってきた。平和を希求する憲法の理念を教え子たちに説いてきた。政治家への転身を打診されることはあったが、法科大学院設置など大学教授としての重責を考え、断念してきた経緯がある。
退官を前にした昨年末、正式に参院選への出馬要請を受けた。「安倍政権の改憲を阻止する」。憲法の重要性を理解しているからこそ出馬を決意した。選挙戦が本格化する中、アメリカで暮らす長女沙葵(さき)さん(39)も応援に訪れ、連日、遊説に同行した。
選挙戦で重点的に訴えてきたのは名護市辺野古の新基地建設問題と平和への思い。演説では、敗戦から日本復帰までの27年間、憲法の適用を受けなかった沖縄の問題に時間を割き、憲法の重要性を訴えた。初めての選挙戦。おぼつかなかった遊説も、日を追うごとに滑らかになっていった。
「知る権利の象徴」としていたトレードマークの帽子を鉢巻きに替えて臨んだ。当選したこの日、「原点に帰る」と支持者らの前で帽子をかぶる“パフォーマンス”を見せたが、すぐに頭から取った。「これから国会の場で、皆さんの知る権利のために頑張る」。湧き起こる拍手の中、支持者に誓った。