勝敗を分けたのは? 知名度不足をカバーできた高良鉄美氏、辺野古「回避」で反発を受けた安里繁信氏


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沖縄選挙区で当選を決め、玉城デニー沖縄県知事(左)と手をつなぐ高良鉄美氏=21日夜、那覇市

 令和最初の国政選挙となった参院選の沖縄選挙区は辺野古移設反対を掲げた高良鉄美氏が初当選を果たした。

 高良鉄美氏の初当選は名護市辺野古の新基地建設反対を前面に訴え、県民投票で示された辺野古反対の県民世論を追い風に、課題だった知名度不足を克服したことが大きい。安里繁信氏は辺野古新基地の是非を明確にせず振興策を中心に訴えたが、浸透しなかった。高良氏は生活課題の消費増税の反対や憲法改正反対も織り交ぜ、安倍政権不支持層の受け皿ともなり支持を広げた。

 高良氏は琉球大で教授を務めながら、オール沖縄会議共同代表も兼務するなど、辺野古を巡る問題で憲法の観点から論陣を張り、「オール沖縄」勢力の理論的支柱となってきた。だが「表だった活動はほとんどなかった」(高良陣営関係者)という事情もあり、知名度不足が課題となっていた。

 このため高い知名度を誇る玉城デニー知事や糸数慶子参院議員、国政野党の党首らが表だって支援した。立憲民主党の枝野幸男代表ら国政野党党首3人が公示前の1日、那覇市内でそろい踏みし、全国的に進んだ「野党共闘」を強調した。

 玉城知事や糸数氏もラストサンデーなど選挙戦の節目で県内遊説に同行するなどし、知名度の低さをカバーした。大票田を中心に無党派層への浸透に成功した。

 一方、安里氏は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について賛否を明らかにしないことで無党派層の取り込みを図った。しかしその姿勢に対して建設業を中心に経済界の一部から反発があり、自民党の基礎票を十分に固めきれなかった。最終盤には運動を拡大して追い上げたが、出足の遅れが最後まで響いた。

 若年層を意識して動画や画像を毎日投稿するなどSNSによる発信を強化したが、挽回できなかった。自民党本部から武田良太副幹事長や宮腰光寛沖縄担当相らが沖縄入りしたが、効果は限定的だった。
 (当間詩朗、沖田有吾)