沖縄尚学が優勝 高校野球沖縄大会を振り返る


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 第101回全国高校野球選手権沖縄大会は、ノーシードから勝ち上がった沖縄尚学が大会を通じて攻守に精度の高いプレーを発揮し、5年ぶり9度目の頂点に立った。夏の甲子園出場は8度目となる。3連覇を狙った準優勝の興南は惜しくも沖尚に敗れたが、延長十三回、3時間49分に及ぶ大熱戦となった決勝は、沖縄の高校野球史に刻まれる好ゲームだったことは間違いない。スタンドに詰め掛けた1万1千人をうならせた。第2シード沖縄水産、第3シード北山、第4シード沖縄工が3回戦までに姿を消す混戦模様の中、西原が初の4強入りを果たすドラマもあった。開幕当初は雨天による順延やノーゲームもあり、調整が難しかったが、各校は高い集中力を保ち、多くの接戦を繰り広げた。

優勝した沖縄尚学の選手たち=21日、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇

■左右の投手陣に厚み

 沖尚は秋季と春季に失策などで自滅する場面が目立ったが、今大会はミスの少ないプレーを最後まで保った。3回戦で秋季に無安打無得点で敗退した沖水に雪辱を果たしたことで自信を深め、大会中の成長がプレーの随所に見えた。
 投手陣の層の厚さは特筆に値する。丁寧に低めに集めることのできる左の仲村渠春悟と右の比嘉大智に加え、大会中に2年生で最速141キロ右腕、永山蒼が頭角を現したことで、万全の態勢となった。守備は大会を通してわずか2失策と安定感を増した。打線は高校通算33本塁打を誇る主将の水谷留佳を筆頭に、少ない好機をものにする勝負強さを発揮。犠打の成功率が高く、球を見極めて四球を選ぶことも多い。

■全体で打撃に鋭さ

 興南は3連覇を逃したが、大会ナンバーワン左腕の宮城大弥を中心に守備は安定し、集中打でビッグイニングをつくる打線は県内随一だった。
 美里工は準決勝で興南の宮城に屈したが、5試合で49点を挙げる強力打線をつくり上げた。中学時代は控えだった選手も多い西原は、犠打や盗塁を絡めた打線で準決勝まで駆け上がった。
 昨秋王者の沖水はエース國吉吹や長打力のある打線で「古豪復活」を目指したが、投打にきめ細かさを欠いた。
 地元から好選手が集まった北山。中学時代に強豪校からの誘いも多かった黄金世代が3年になり、勝負の年だったが、エース金城洸汰がけがで満足に投げられなかったのは残念だった。
 嘉手納や中部商という強豪を破り、8強まで進んだ読谷の快進撃もあった。
 今大会は全体としてシャープな振りをするチームが多く、投手力よりも打力が高い印象だ。決勝を含め、点を重ねる試合が目立った。一方、切れのある直球で勝負する投手が多く、好打者との真っ向勝負は見応えがあった。1、2年で中軸に就く打者やマウンドを任される投手も多く、次世代を引っ張る選手の台頭を期待したい。

■初の夏制覇なるか

 沖尚の夏の甲子園出場は8強まで駒を進めた2014年以来。当時は左足を高く上げる豪快なフォームで、力強い直球を武器としたエース山城大智がチームの中心だった。この世代に憧れて進学を決めた選手も多い。比嘉公也監督は1999年にエースとして春の選抜を制し、2008年には監督として春の頂に立った。抱負な経験を生かし、沖尚を初の夏制覇に導けるか。熱戦の舞台は兵庫県・阪神甲子園球場へと移り、8月6日に幕を開ける。
 (長嶺真輝)