【記者解説】事業計画の甘さを露呈したモノレール3両化遅れ


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 沖縄都市モノレールが目指していた3両編成車両の2022年度末の導入、23年度の運行開始が遅れる可能性が出ている背景には、同社や県、那覇市、浦添市の見通しの甘さがある。車両製造を予定する事業者は「一般的に、早くて5年前」の調整が必要とし、22年度の完成に難色を示した。3両化事業は、県や両市負担分の8割を国が補助するなど早期実現を求めてきたが、事業計画の中身の脆さが露呈した。同社が車両の完成を22年度と見込んだ根拠に疑問も残る。

 県民や観光客の貴重な足となるゆいレールは、乗客数が右肩上がりに増加し、18年度には1日平均5万2355人を記録。その一方で朝夕の混雑緩和が喫緊の課題だった。国は3両化に向け、自治体負担分の8割に当たる179億円の国費補助を見込み、8月末の概算要求に向けた検討に前向きな姿勢を示してきた。

 6月12日に開かれた沖縄都市モノレールの株主総会では「3両編成車両の新造については、製造業者の協力を得て、22年度中に完成させる」と3両化に向け、着実な前進を印象付けた。

 だがモノ社が車両発注を予定する日立製作所へ正式に依頼したのは6月初めだった。関係者によると、現在のゆいレール車両は同社しか製造を手掛けていない技術を含んでおり、「日立製作所にしか製造できない」(同関係者)と話す。

 日立製作所は22年度の完成が困難とする理由に、海外受注を受ける他事業との兼ね合いや車両基地の土地不足などを挙げ「物理的に厳しい」とする。今後、引き続きモノ社と「総合的な調整を行う」方針だが、当初予定していた23年度の運行開始がずれ込む可能性は否定できない。運行開始の見通しが立たないことで、観光業界や県民の生活に影響が及ぶ。

 今年10月には浦添市までの延長区間が開業し、20年3月には那覇空港第2滑走路の利用が始まる。県は19年度の入域観光客数の目標を1030万人と設定した。今後利用客の増加は避けられない。4者には、事業実現に向け、需要に対応できる実効性のある取り組みが早急に求められる。
 (吉田早希)