首相が元患者家族に直接謝罪 ハンセン病訴訟 国、米統治下の補償に前向き


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ハンセン病元患者家族訴訟原告団に謝罪し、匿名の原告に向かい頭を下げる安倍首相=24 日午前、首相官邸

 【東京】安倍晋三首相は24日、ハンセン病家族訴訟の原告団と官邸で面会した。国に損害賠償を命じた熊本地裁判決の確定を受け「皆さまが強いられた苦難と苦痛に対し、首相として政府を代表して心から深くおわび申し上げます」と直接謝罪した。原告以外の家族を含めた補償に向けて法整備を進める考えも表明。「差別・偏見の根絶へ政府一丸となって全力を尽くすことをお約束する」と強調した。判決が米統治下の沖縄の被害を認めていないことに関して、根本匠厚生労働相は一律救済に前向きな姿勢を見せた。

 根本厚生労働相は、2001年の熊本地裁判決が沖縄の原告の賠償を復帰後に限定したものの、議員立法の「ハンセン病補償法」で沖縄も同一基準で補償した例を挙げ「補償措置の具体的な内容は、この経緯も踏まえて検討する」と述べた。

 厚労相の発言を受け、弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は「私たちが一律の補償条項を求めていることを厚労省が受け止めている表れだ」と高く評価した。

 原告団長の林力さん(94)は首相との面談で控訴を見送った判断を「私たちに光を与えてくれた」と評価。法整備については「大きな前進だ。私たちの意見を十分に取り入れてほしい」とした。

 原告・弁護団は24日午後、超党派の国会議員でつくるハンセン病問題の懇談会に出席し「超党派で一致した議員立法を秋の臨時国会で成立させてほしい」と要望。会長を務める自民党の森山裕国対委員長は前向きに応じた。

 首相との面会には、原告と弁護団ら約40人が参加。首相は「ハンセン病に対する極めて厳しい差別と偏見は(家族の)皆さまに対しても向けられた。これは否定しがたい厳然たる事実だ」との認識を示した。補償に関し「訴訟に参加されなかった方々も含め、新たに補償するための立法措置を講じる」と述べた。原告側は啓発活動の強化を求めた。

 熊本地裁は、隔離政策で家族が差別被害に遭ったのに国は被害を防ごうとしなかったと認定していた。