沖縄に自民幹部の姿ほとんどなく…始まる前から分かっていた勝敗


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沖縄選挙区で当選を決め、玉城デニー沖縄県知事(左)と手をつなぐ高良鉄美氏=21日夜、那覇市

 「衆議院も合わせれば、6回連続で国政選挙で国民から自民党に強い支持をいただくことができた」

 安倍晋三首相は参院選の結果を受けた22日の会見でこう強調した。だが、名護市辺野古の新基地建設を強行する政権への反発を背景に、今回も沖縄では自民候補が大敗を喫し全国的な傾向とは真逆の結果が示された。第2次安倍政権以降、3度あった参院選で自民は沖縄選挙区を制すことができていない。

 今回の参院選は沖縄で辺野古の是非が問われた一方で、この問題が全国的な争点として位置付けられたとは言いがたく、辺野古を含めた安全保障全般に関する与野党の論戦は低調だった。「始まる前から沖縄の勝敗は見通されていた。与野党とも力を入れるべきは沖縄ではなかった」(自民関係者)

 双方が沖縄選挙区の情勢を見切っていたこともあってか、本土では街頭での論戦で各党から沖縄の問題が声高に叫ばれる場面はほとんどなかった。

 県内の重要選挙では必ず沖縄入りし、てこ入れを図ってきた菅義偉官房長官をはじめ、自民幹部が応援に駆け付ける姿はほとんどなく、これまでとは対照的だった。公示後は野党の各党幹部が沖縄に入ることもなく、与野党とも関心は他の激戦区に集中し、その支援に注力した。

 投開票から一夜明けた22日、名護市辺野古の大浦湾ではいつもと変わらず作業の様子が確認された。菅官房長官は同日の記者会見で、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対を示した沖縄の民意にどう向き合うかを問われ「(工事を)進めさせていただきたい」と淡々と答えた。

 選挙で民意が出ても、政府は工事を進め強硬姿勢を鮮明にする。これまでも何度も繰り広げられてきた光景だ。その既視感に、県幹部は「今後も新基地建設反対の候補が安泰というわけではない。次第に有権者も無力感を抱くことになるのではないか」と危機感をにじませる。

 工事が進むことで県民に諦めムードが広がるとの政府の思惑もちらつくが、別の県幹部は「全県選挙では、辺野古移設を認める候補に多くの県民は投票しないことは明らかだ」と述べ、県の立場が支持されていることに自信を見せる。

 辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」を掲げる高良鉄美氏の初当選を決めた21日夜、玉城デニー知事は民意に応えて対話で解決を図ることを「政治の王道」と表現した。2月の県民投票に、今回の参院選など主要選挙の結果が加わり、新基地建設阻止を掲げる県の後ろ盾となる。玉城知事は、あくまで民主主義の土俵で、国際社会や全国の世論に対し訴え続ける正攻法で政府に対抗する考えだ。
 (’19参院選取材班)