【東京】日米両政府は25日、基地の外で発生した米軍機事故の現場対応に関する「ガイドライン(指針)」について、日本側の警察や消防が現場に速やかに立ち入ることができるよう改定することで合意した。
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ガイドライン改正の交渉が、事故現場への立ち入りを巡る協議になっていること自体が問題だ。米軍提供施設の区域外での米軍機事故ということは、日本の領土・領空・領海内で発生する事故を指す。日本の法律、国内法が適用されるべき場所に米軍機が墜落、不時着すると、その時点で日本の主権が行使できなくなる。全くもっておかしな話だ。
ガイドラインの交渉のポイントは「事故現場への立ち入り権」ではなく、「事故の捜査権の確立」にある。犯罪捜査を犯人に任せず、主権国家の捜査当局がしっかりと捜査するように再交渉すべきだ。事故の状況と事故原因の究明、被害補償、再発防止までの一連の業務を「主体的に行える権利の確立」が重要である。
内周規制線への立ち入りに日米の同意が必要なこと自体、現行のガイドラインから改善されておらず、公正な捜査はできない。日本政府は米国に対して、主権国家としての当然の権利を主張できていない。今回の交渉は対等とは言えず、残念だ。
沖国大の米軍ヘリ墜落事故を機にガイドラインが改正された。日本側が現場に立ち入れるかと思えば、現場近くの内周規制線は日米共同、外周規制線は日本側が管理することになった。
問題の本質を議論しなければ、米側に譲歩を迫られ、主権を行使できない現状からさらに事態が後退しかねない。
ベルギーやイギリスでは、米軍機事故の現場は地元警察が捜査する。米軍に任せているのは日本だけで「米国に守ってもらってるのだから、仕方ない」と思っているのは、日本国民だけだ。戦後74年が過ぎても、従属意識が根強く残っているように思う。
(安全保障論)