参議院選後、安倍晋三首相は会見で「安定した政治基盤の上に新しい令和の時代の国づくりをしっかり進めよとの強い信任をいただいた」と述べた。この映像がなんの解説もつけずくり返しテレビで流れる。あたしはテレビを消した。
参議院選前からあたしはテレビを訝(いぶか)しげに眺めている。投票日には各社が一斉に開票特番を流した。選挙後の安倍首相の会見もくり返し流した。が、それで選挙についてきちんと報じていると思っているとしたら大間違いだ。
今回の参議院選、投票率が50%割れ。これは戦後で2回目らしい。
恥ずかしくないのか。その大きな責任はテレビ局にあるだろう。
選挙前、投票の判断材料ともなる番組は極端に減った。電波は公共財。だからこその意味や意義がある。でも、目立ったのは番組と番組の間に流れる自民党のCMだ。
弱肉強食、結局なにもかも金次第でどうにでもなるのか……と暗澹(あんたん)たる思いでいたが、そうでもなかった。
自民党は改選前定数より10議席も減らした。その結果、改憲勢力は参院で3分の2割れである。
2017年の衆議院選に比べ、自民党は100万票を減らし、公明党も50万減った(維新は150万票ほど増やしたが)。
立憲民主党も300万弱減っていたが、共産党も社民党も微増で票を伸ばした。そしてできたばかりの、れいわ新選組が288万票も取った。
れいわは今の弱肉強食の格差社会がおかしいと訴える山本太郎氏が作った党だ。世の中の弱者とされた候補者たちが、中央へ出ることを決意し声をあげる、だから世の中が変わる、という考え方は新鮮だった。
投票率が低いと組織票が強い与党が有利になる。が、今回は違った。あたしはそこに希望が見えた。
今のままでは不味(まず)い、われわれは変わらねばならない、そういう強い気持ちを持って、信念の一票を投じた人がけっこういる。
なにも変わらないように思えて、なにかが変わってきている。
(室井佑月、作家)