沖縄県那覇市の安里川や国場川などで目撃される「オオメジロザメ」。7月7日付の琉球新報で、目撃情報や釣り人の様子を紹介した。だが、同種は準絶滅危惧種に指定されており、琉球大学理学部の立原一憲(かつのり)教授(魚類学)は「川に上るのは世界的にも希少な光景。釣り上げずに見守ってほしい」と保護の重要性を訴えている。
オオメジロザメは、保護が必要な沖縄の生物を紹介する「沖縄県レッドデータブック」の2017年の第3版で準絶滅危惧種として記載された。国際自然保護連合(IUCN)でも同様に指定されている。さらに海にすむ同種のサメが川に現れる理由は学術的に未解明で、研究の真っ最中だ。
県レッドデータによると、オオメジロザメは、全長56~81センチの胎児を出産し、沖縄島や西表島で誕生直後とみられる小型のサメが河川に進入する。生態系の頂点に位置し、胎生のため卵生の魚類と比べて個体数は少ない。立原教授によると生後3年でも約1メートルにしか成長しないという。
沖縄の川で見られる幼魚は泳ぎも未熟で、立原教授は「海で餌を取れず、同種の他個体に食べられることもある。川は逃げ場になっていると思うので、目的なく釣り上げるのはやめてほしい」と語る。成体は危険な要素もあるが「幼魚が人を襲うことはほとんどない。車の交通事故やハブクラゲのトラブルの方がはるかに多い」と話し、駆除する必要性は低いと訴える。
一方、本紙がサメを釣る様子を取材した高嶺太一さん(39)は「(準絶滅危惧種とは)知らなかった。ただ駆除する目的で釣っているのではなく、もし釣れても2分以内にリリースしている」と話す。サメの希少性については「20年前は簡単に見られる魚ではなかったが、(最近は)目視できるまでに増えている」というのが実感だ。
16年10月に北谷海岸でオオメジロザメが現れ、周辺のビーチが遊泳禁止になったことを挙げ「後々大型化して近海魚を食べ、人の近くに現れて駆除が始まるのではないか」と心配する。
奄美、沖縄の琉球列島は希少な生態系があり、世界自然遺産登録を目指している。しかし、陸の生物や植物の保護に向けた声が多く、水中の生物への認識は高くない。立原教授は「陸と比べて水中の環境変化に人は気付きづらい。だが、水の中にも世界に誇れるものがある」と強調した。
(大橋弘基)