海中分解のプラ原料を開発 沖縄県と甲南化工が特許取得 近海の菌活用


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 沖縄県商工労働部は29日、沖縄近海の海中から新たに発見した菌株を用いて、海洋生分解性プラスチックなどの原料として期待される「(R)3―ヒドロキシ酪酸(R3HB)」を効率的に生産する方法を開発したと発表した。R3HBを含むプラスチックは微生物の少ない海洋でも生態系の中で分解され、世界的な問題となっているプラスチックごみによる海洋汚染対策になると期待されている。県は普及に向けて生産のさらなる効率化とコスト減少を図る。

 県と甲南化工(大阪)の共同研究として5月10日付で特許を取得した。

 研究を進めてきた県工業技術センターは2009年から、R3HBを生産する「ハロモナス菌」のさまざまな菌株を沖縄近海で採取していた。数百種類の菌株をテストし、従来より大量にR3HBを生み出す菌株を発見した。

 通常のハロモナス菌株は発酵により細胞内に物質を作り、それを研究者が化学的に分解することでR3HBを取り出している。新たな菌株は細胞の外に直接R3HBを作り出すため効率が良く、大量に生産できるという。

 培養液の成分や温度など生産条件を整えることで従来の2倍以上の高効率で生産が可能で、抽出の技術も向上したため1トンのタンクを使うと1カ月で100キロのR3HBを含む培養液の生産が可能だという。この菌株が確認されているのは現在沖縄近海だけだという。

 世界的に使用されているプラスチック製品の多くは石油由来で自然界で分解されないが、土中の微生物によって分解される性質を持つポリ乳酸系の「生分解性プラスチック」も実用化が進んでいる。だが、ポリ乳酸系のプラスチックも陸上に比べ微生物が少ない海洋の環境では分解されない。海洋中でも分解されるR3HBは大量生産が難しく、1グラム当たり数万円と高額で実用化には高いハードルがあった。

 県工業技術センターの世嘉良宏斗主任研究員は「試作品の段階では、もろく、プラスチックとしてはまだ使えない。生分解性を維持したまま良いプラスチックを作っていく」と話した。

 同センターは今後、3月に設立されたベンチャー企業のグリーンテクノプラス(うるま市、常盤豊代表)と共同して開発に取り組んでいく。5年以内に、R3HBを含むプラスチック製品をポリ乳酸と同水準のコストで生産することを目指している。