地元2紙の参院選報道抗議を巡る自民党県連の内紛とは


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参院選に関する地元紙報道に関して自民党県連が報道各社に送った記者会見の案内状

 参院選の報道を巡り、沖縄タイムス社への抗議を表明していた自民党県連が1日、「琉球新報には抗議していない」とのこれまでの説明を一変させ、地元紙2紙双方に抗議すると表明した。選挙戦の内幕を報じた地元紙報道によって県連と安里繁信選対との間で生じた不和や、支持者からの不満の解消を優先させた形だが、態度を二転三転させた執行部の対応に県連内からは「県連の劣化ぶりを印象付けるだけだ」との声も漏れる。

 7月21日に投開票された参院選沖縄選挙区の結果を受け、本紙と沖縄タイムスは23日付の紙面で安里氏の敗因などについて連載記事を掲載。安里氏が主要争点だった米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について「口が裂けても推進・容認とは言えない」などと発言したことで、県連内で「公認を取り消すべきだ」との声が上がっていることを沖縄タイムスは県連幹部、本紙は県連関係者の話として紹介した。

 安里選対と自民党県連は両紙の記事が掲載された23日当日、それぞれ沖縄タイムスの担当記者を呼び出して直接抗議し、記事中の「県連幹部」の公表を求めた。さらに、選対幹部は県連に対しても発言者を明らかにするよう抗議した。抗議に対して沖縄タイムスは編集局長名で「当該記事に誤りはない。県連が匿名の発言者名を明らかにするよう求めたことは報道機関への不当な介入と言わざるを得ない」との声明を発表した。本紙には両者から直接の抗議はなかったことから社として対応しなかった。

 だが「沖縄タイムス社記事について」と案内があった24日の自民県連の記者会見の場で中川京貴会長は「両紙に対して抗議する」と発言。会見の内容は沖縄タイムスの記事が中心だったこともあり、会見後に本紙が中川会長や島袋大幹事長などに発言の真意を取材したところ、「琉球新報に抗議した認識はない」と釈明した。26日には本紙政治部長も自民県連に出向き、事務局長に事実関係を確認したが、会長と幹事長に改めて確認するとした上で「新報に『不満』は示したが、訂正は求めていない」「会見でも抗議した認識はない」との認識を示していた。

 こうした経緯があったものの、自民県連は8月1日の議員総会では一転して本紙にも抗議することが執行部から報告された。報告に対して出席議員から、本紙への抗議を控えるべきだとの意見も出たが、「タイムスと新報の記事の内容はほぼ同じだ」(島袋大幹事長)として、最終的に本紙を含めて地元2紙に抗議することを決めた。

 態度を変節させた理由と本紙に抗議する理由について報道陣に問われた中川会長は、23日付本紙連載の最後に「県連関係者は『企業が動かない中で、予想よりも善戦したと言える。評価は難しい』と漏らしたとあるが、企業が動いたから23万票も得票があった」と説明した。ただ、本紙は自民党を支援する県内主要企業の多くが従来の選挙と比べ、支援体制を制限していることを確認している。県連の一連の行動について自民党関係者は「会見は安里選対や県連元幹部に対する配慮が大きいのではないか。選挙戦の敗北を真摯(しんし)に受け止め、県連は選挙戦の総括を優先すべきだ」と話した。