国防権限法案 基地派生汚染 米で規制へ 調査団体、情報精査を県に提言


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 在沖米軍の展開について再調査を求める条項などで話題になっている米国の「国防権限法案」。2020会計年度の国防予算の大枠を定める法案で、既に上下両院で可決され、今後、両院で一本化に向けた協議・調整が予定されている。米軍の移転計画だけでなく、沖縄県内の米軍基地周辺で問題となっている有機フッ素化合物(PFOSなど)による水質汚染に関して注目すべき条項もある。

 県内を拠点に活動する調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」(IPP)の河村雅美代表は国防権限法案に着目し、沖縄での水汚染対策に生かす重要性を訴えている。8日、県が法案の内容や米議会の動向を調べ、県内の施策に反映させるよう提言する文書を提出した。「汚染問題が米国でどう認識されているか、議会が政府に何を要求しているのか改めて確認する必要がある」と強調した。

 米国ではこれまで有機フッ素化合物を規制・対処する指針や法律がなかった。法整備を後押ししたのは、米国内での汚染の深刻さと米政府の対応の遅さに強い危機感を持った市民や専門家らで、議会へのロビー活動を続けてきた経緯がある。河村氏は「連邦議会が『有機フッ素化合物汚染を緊急に対応すべき重要な問題だ』という認識を示したことになる」と指摘する。

 河村氏によると、有機フッ素化合物汚染に関連する条項は少なくとも、上院の法案で28項目、下院の法案で15項目ある。沖縄で参照すべき条項として(1)調査・監視の基準設定を求める項目(2)泡消火剤の廃棄に関する項目(3)飲料水・農業用水の安全確保を求める項目―の3点を挙げている。

 法案では今後、県内でも問題となっている泡消火剤について使用禁止や廃棄に向けたスケジュールが示される見通しだという。飲料水について被害を受けた基地の近隣地域に米軍がボトル入りの飲料水の配布や水浄化施設の設置をしてきた経緯も記されている。さらに農業用として汚染されていない水を確保するよう国防総省に求める条項が盛り込まれている。県内では普天間飛行場周辺で農業用水が汚染されて問題となっている。

 河村氏は「これまで県は米国側の情報を入手・活用して交渉していないため、米軍側からずさんな回答しか引き出せていない。情報発信も説得力に欠ける」と指摘。「県が自ら米国の情報を入手・精査し、県内での対応や政策決定に結び付けることを提言する」と語った。
 (明真南斗)