米軍が沖縄県東村高江のヘリ炎上現場から一方的に持ち去った土壌を処分したことは、事故の実態や環境への影響を解明する日本側の手段を奪ったことになる。事故現場では放射能汚染の可能性も指摘されながら、日本側が現場から排除され、十分な検証ができなかった経緯がある。沖縄防衛局は琉球新報の問い合わせまで米軍による土壌処分の事実を把握しておらず、米軍の行動を監視する態勢が整っていない現状も改めて浮き彫りとなった。
さらに牧港補給地区(キャンプ・キンザー)には、県外に搬出しなかった約2立方メートルの土壌がなお保管されている。処分した土壌との違いや汚染の種類、程度は全く明かされていないが、在日米軍は「この残留廃棄物の管理や処分は日本環境管理基準(JEGS)で取り扱っていない」と答えている。日本国内の環境基準では処分ができない、より高濃度の汚染が含まれる可能性も否定できない。
2017年の事故当初、米軍が事故機を管理し、日本側が現場に立ち入れたのは6日後だった。県や沖縄防衛局は事故現場の土壌を採取して調査しようとしたが米軍は認めず、事故機周辺から土壌を持ち去った。
県と防衛局は残土の汚染状況を調べたが、放射線量について「異常値は検出されなかった」と説明。一方、米側が日本政府に通知した報告書では放射線量は環境基準内としながらも日本側の10倍程度だったという。
米軍が土壌をキンザー内に持ち込んだ後に、県や浦添市、浦添市議会は土壌の管理状況を確かめるためキンザー内への立ち入り調査を求めたが、米軍は応じないまま自らの裁量で土壌を処分したことになる。
調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」の河村雅美代表は「米軍の回答は不透明なことが多く、適切な処理か検証できる材料がない。JEGSや国防総省の指示書のどの条項に基づく処分かも示していない。裏付けとなる文書の開示と日本側への報告が求められ、日本政府と県も米軍の姿勢を追及する責任がある」と指摘した。
(明真南斗)