【記者解説】携帯会社と電力がなぜ提携?


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 沖縄セルラー電話と沖縄電力が業務提携し「auでんき」の提供を始める。背景には、電力小売り全面自由化後に勢いを増す新電力にこれ以上シェアを奪われたくない沖縄電力と、ライバル携帯・通信会社に対抗するためサービスの幅を広げたい沖縄セルラー電話の間で競争力強化の狙いが一致したことがある。

 2018年4月に沖電が自社以外への電力の卸販売を始めたことにより、県内では新電力の普及が急ピッチで進んでいる。電力・ガス取引監視等委員会の資料によると、今年5月の県内の販売電力量52万6114メガワット時のうち5・8%に当たる3万645メガワット時が新電力となっている。高圧なども含め、10社以上の新電力が参入するなど競争が激化している。

 沖電は18年6月に使用量が増えると電気料金が安くなる「グッドバリュープラン」を始めたが、その後も新電力の切り替えは増加している。今回の提携は、同プランを上回る還元と使用電力の見える化による利便性を提供し、シェアの低下に歯止めをかける狙いがある。

 沖縄セルラーは、au利用者のみを対象とした電気料金へのポイント還元サービスなどで、新規顧客取り込みと解約防止効果を見込んでいる。KDDIが展開する県外の例では、「auでんき」の利用者は未利用者に比べau電話の解約率が約4割低いというデータもあり、高い経済性、利便性を提供することで競争力向上を図る。

 携帯電話事業で競合する各社が電力小売りを進めていることも大きい。ソフトバンクグループのSBパワーや、10月から携帯電話事業に参入する楽天も県内で電力小売りを開始していて、沖縄セルラーもサービスメニューを拡充する必要に迫られていた。

 電力、通信両業界で競争が激化する中で、提携により利用者にどこまで新たな価値を示せるのか、注目が集まる。

 (沖田有吾)