「AIコーチ」でラート全国準V 動きを分析し、減点されない演技、練習法を考察


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AIを使った技の研究で全国大会準優勝を果たした北島栄司さん(中央)と同研究に携わった沖縄高専の佐藤尚准教授(左)、琉大の宮田龍太助教(右)=6日、琉球大学体育館

 人工知能(AI)がスポーツのコーチに―。8月24、25日に新潟大学で開かれた「第15回全日本学生ラート競技選手権大会」で、琉球大学大学院理工学研究科1年の北島栄司さん(23)が準優勝に輝いた。2年前に同競技を始めたという北島さんは今年3月、琉大工学部の宮田龍太助教と沖縄工業高等専門学校メディア情報工学科の佐藤尚准教授らと共に、AIを練習や演技に応用する共同研究を始めた。大会へ向けた実質的な練習期間は約1カ月間だったが、研究による指導が実を結んだ。

 体操の派生競技である「ラート」はドイツ発祥のスポーツ。2メートルほどある2本の鉄の輪を平行につないだ器具を用い、回転や跳躍で技を競う。北島さんが出場したのは跳躍種目で、回転するラートの上から半ひねりの技を成功させた。

 体操部にも所属する北島さんだが、アルバイトとの両立などで練習時間が限られるため、独学での練習に限界を感じていた。そこで目をつけたのがAIによる動きの分析だ。3人の共同研究は、ひねり技をする際に、体の癖や関節の位置などをAIで分析することで可視化・数値化し、減点されない演技や最適な練習法の考察、技の成功率を上げることを目的とした。

 分析に使ったのは昨年発表された「PoseNet」というシステムで、動画に写った人物の関節の位置を認識できるAIだ。タブレット端末やスマートフォンの動画だけでデータ収集が可能で、センサーなどを必要とした従来の手法より容易でコストも低い。

 AIの環境に必要なシステムの構築や分析に関する指導は宮田助教が、演技からのデータ収集や分析は北島さん自らが行い、データサイエンスの研究者で器械体操の経験もある佐藤准教授が専門的な指導を担った。

 研究と準優勝について北島さんは「練習に時間的な制約もある中でAIデータの存在は心強かった。良い結果が出せてうれしい」と語った。

 宮田助教と佐藤准教授は「まだまだ発展途上の研究ではあるが基礎は出来上がりつつある」とした上で、研究の将来的な発展によるさまざまな可能性にも期待を膨らませた。
 (下地陽南乃)