台風で足止めの透析患者救った医薬品リレー 台湾人観光客「早く届けてくれて感謝」


この記事を書いた人 Avatar photo 大城 誠二
届けられた透析液を受け取り、安心する陳冠任さん(前列左から2人目)。協力した医師らに感謝した=6日夜、那覇市内の宿泊施設

 台風13号の接近で航空便が欠航し沖縄に延泊せざるを得なくなった台湾人の人工透析患者が、県内の医師や医薬品会社などの連携プレーで透析液を確保し、緊急の事態を免れた。家族旅行で来沖した透析患者の陳冠任(ちんかんにん)さん(50)は台湾から余分に持参した透析液も前日で使い切っていた。6日夜、東京の業者から取り寄せた透析液が届き「絶食を覚悟していた。とてもうれしい」と感謝した。

 人工透析は、腎機能低下で血液から不要な成分を除去できない人のための治療法で、陳さんは腹の中に入れた透析液に血液中の汚れを取り除かせる「腹膜透析」の患者。1日に4~5回透析液の交換が必要で、旅行中も続けていた。透析が止まると血中に毒素が蓄積し不整脈を起こす可能性もあるため、前日から食事を控えていたという。

 陳さんは家族6人と友人の計7人で観光のため2日に来沖。5日に帰る予定だったが、台風接近で9日の便まで搭乗できないと告げられたという。台湾のかかりつけ病院に連絡し患者支援団体を通して、医療通訳士で中国語の通訳や語学人材育成を手掛けるSORAアカデミーサポートの城間宇恵社長を紹介された。

 城間社長は昨年、台湾から透析患者を受け入れる事業を手掛けていた。当時、事業に携わったとよみ生協病院、医薬品総合商社のダイコー沖縄が協力。陳さんに適合し使用できる透析液が県内になかったため、急きょ東京の大手医薬品業者から取り寄せた。

 陳さんは「旅行時は多めに透析液を持参するが、今回は対応できなかった。早く届けてくれて感謝したい」と笑顔。「安心して旅行できるサポート体制をつくってくれるとうれしい」と希望した。