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カーナビ向上で集落の生活道路にもレンタカー 沖縄本島北部、事故や渋滞が深刻化 オーバーツーリズム(3)〈熱島・沖縄経済 第2部〉3


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
レンタカーなど多くの車が行き交う屋我地島の道路=8月26日、名護市

 名護市の屋我地島の県道を、ひっきりなしに車が通過する。中には見通しの悪い道を猛スピードで走り去っていく車もある。地元に住む男性は道路に目を向け、「高齢者が簡単に横断できない状態だ」と危険性を指摘する。以前は地域住民の車が行き来する程度だったが、今ではレンタカーを中心に交通量が増えたという。男性は「まるで那覇市の中心部のような車の数だ」と嘆いた。

 2005年2月に屋我地島と古宇利島をつなぐ古宇利大橋が開通。近年の観光客の増加とともに新たな観光地として古宇利島の人気が高まり、ルートに位置する屋我地島でレンタカーの往来が目立ち始めた。時には大型バスが複数台で通過し、週末やイベント開催時などは渋滞も発生する。

 地元の男性は「左右を確認して横断しようとしても、すぐに車が高速で近づいてくる」と交通環境の変化に戸惑う。集落の各所には安全運転を呼びかける看板が掲げられるが、交通マナーの大幅な改善には至っていないという。

 近年はカーナビゲーションの性能が向上し、国道など主要道路以外も目的地への経路として示されるため、住民が使う生活道路でもレンタカーが頻繁に見られている。恩納村仲泊区では、民泊施設に向かうレンタカーが集落内でスピードを出したり、外国人ドライバーが右側通行をしたりして、地域でトラブルを生んでいる。

 大城敦区長は「集落内の生活道路の情報はカーナビに表示しないでほしい」と訴える。

 名護市では沖縄自動車道の許田インターチェンジから市街地へ向かう道路の混雑が深刻化する。市商工観光局の平川洋一郎班長は「市民へのヒアリングや区長へのアンケート結果を見ても、渋滞が地域にマイナスの影響を与えているという意見は多い」と語る。

 週末に限らず平日でも渋滞が発生し、仕事などに影響が出る事態も起きているという。平川班長は「観光客数は急激に伸びており、以前からオーバーツーリズムへの懸念はあった。市内の課題を洗い出す必要がある」と強調した。

 名護警察署の管内(名護市、大宜味村、東村、国頭村)では、レンタカーによる物損事故が約800件(8月末時点)あり、物損事故全体の36%を占めている。縁石や壁への接触など単独で起こす物損事故が多いという。日本の交通ルールを知らない外国人客や、運転に不慣れな国内客が事故を起こしていると見られている。同署の上間誠副署長は「レンタカーに限らず、事故防止には運転者が安全への意識を強めることが重要になる」と語る。

 2020年3月には那覇空港の第2滑走路が運用開始予定で、今後も北部を訪れる観光客の増加が見込まれる。地域住民の生活を守るため、関係機関が連携した取り組みが進められるか注目される。
 (「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)