【東】東村高江で6年ぶりの豊年祭が13日に開かれる。3年ごとに開催している行事だが、3年前は米軍のヘリコプター発着場(ヘリパッド)建設が再開したためできなかった。当時は建設に抗議して座り込む人や機動隊、報道陣など大勢の人が行き来したが、今は座り込みの市民の数も減り、人口も減った。それでも久しぶりの行事が区民の心をつないでいる。
9日午後7時半、暗闇の中で高江公民館の灯が目立つ。中では東小6年の仲原みなみ(12)さんと東中2年の仲嶺野々花さん(14)が「かぎやで風」の練習を始めていた。仲嶺久美子区長(69)は2人の踊りを見ながら「かぎやで風は中学生が踊る演目だけど、高江は中学生が1人しかいないから1人は小学生なんです」とつぶやいた。
区によると、6年前は150人いた人口も高齢化が進み、年々減少。移住者も増えているが、区から出て行く人もおり、現在住民は100人程度だという。
戦前からあったという豊年祭も途中で途切れたためか、伝統の踊りは途絶えてしまっている。それでも祭りだけは残したいと、近年は試行錯誤しながら3年ごとに続けてきた。成人会によるオリジナルの演劇や高江出身者のフラダンス。他の地域にはない高江独特の演目もそこから生まれた。
豊年祭が開かれるはずだった2016年9月。ヘリパッド建設が再開した直後だった。「工事で落ち着かなくて中止にしたんです」。仲嶺区長は言葉少なに語った。
待ちに待った豊年祭を前に、8月中旬頃から公民館には頻繁に区民が集うようになった。練習の前の“ゆんたく”も楽しみで「こういう機会もいいね」と話し合っている。5年前に広島県から高江に移住したアントン沙莉さん(35)は喜友名サヨさん(79)の踊りを見ながら振りを懸命に覚えた。「地域行事に参加するのは初めてなので入れてもらってありがたい」とほほえむ。金城梢さん(30)は自主練習のためとスマホで動画を撮影した。「普段はなかなか集まらないから、こういう機会にいろいろお話ししたい」と話した。
本番では総勢30人が13演目を披露する。仲嶺区長は「人が少ないから観客も少ないけど」と話しながら「久しぶりの行事。みんな練習もゆんたくも楽しんでいますよ」と笑顔を見せた。
(田吹遥子)