[日曜の風]消費税の在り方 経済学の始祖に学べ


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 消費税増税のタイミングが間近に迫っている。消費税とはどういう税金なのか。どうあるべき税金なのか。

 これらのことについて、経済学の生みの親であるアダム・スミス大先生が、その大作「国富論」の中で実に面白いことを言っている。ポイントは2点ある。第一に、消費に対する課税には所得税の代替税としての役割がある。第二に、消費課税においては生活必需品と贅沢(ぜいたく)品の扱いを分けるべきである。

 第一点は、人々の所得を正確に把握して、それに見合う税金を取ることはなかなか難しいという認識に基づいている。金持ちは所得隠しをするし、社会的地位が高いからといって所得が多いとは限らない。そこで、人々の消費に注目する。金持ちは派手にカネを使う。したがって、消費行為に課税すれば、しっかり税収を確保できるだろうというわけだ。

 この言い方から類推できることは何か。それは、金持ちが買いそうな贅沢品には高い税率を課すことが望ましいという含意だ。つまり、軽減税率もさりながら、高額商品に関しては重増税率を課すことで、消費税にも累進性をもたせるべきだという考え方だ。先生の主張からこの点を読み取って大過ないだろう。

 第二点についてみよう。大先生は、生活必需品に関しては、消費課税分に見合って賃金が上昇する必要があると言っている。なぜなら、消費税が上乗せされれば、その分、物の値段は上がる。その物が必需品であれば、労働者は生活を維持できない。労働者の生活が行き詰まれば、経済活動が成り立たない。したがって、生活必需品の消費に課税するなら、賃金もそれにスライドして上昇しなければならない。これに対して、贅沢品は税金のおかげで値上がりするなら、買わなければいい。

 先生のこの論法に従えば、こと贅沢品に関する限り、遠慮なく課税すればいいということになる。

 いずれも誠にごもっともだと思う。日本国政府は、とりあえず今回の消費税増税を見送った上で、「国富論」を学習する必要がある。該当箇所は、第5巻第2章4節2項ですよ。

(浜矩子、同志社大大学院教授)