「ちょっと呼ばれたら行く気持ち」 〝喜劇の女王〟最終公演も笑い渦に 尽きぬ意欲に会場拍手


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
劇団「でいご座」の最終公演を終え、出演者に囲まれ舞台あいさつする仲田幸子さん(中央)=16日、沖縄市民会館(ジャン松元撮影)

 沖縄県民を笑いで励まし続けた劇団でいご座の最後の舞台。シリアスだったり、涙ぐむ場面だったりしても“喜劇の女王”仲田幸子さんが舞台に立ち、一言しゃべるだけで会場は笑いの渦に包まれた。「この幕で引退させていただきますよう心からお願い申し上げます」と冒頭から“幸子節”。最後のあいさつで「ちょっと呼ばれたら行く気持ちでいますので」と舞台への尽きない意欲を漏らすと盛大な拍手が送られた。

 笑って泣いて楽しんだ観客は「パワーをもらえた」「でいご座の最後の舞台を見ることができて良かった」と笑顔で会場を後にした。「寂しい」「もっと続けてほしかった」と惜しむ声も多く聞かれた。

 公演を終えた仲田さんは疲労感を漂わせながらも舞台裏で報道陣の取材に応じた。約1500人の笑い声に「なんとも言えないね。笑いがなかったらもう前に辞めていた」と満足そうな笑みを浮かべた。「足が折れても最後まで出るから」という意気込みで臨んだ舞台。祖母と一緒に舞台に立った孫のまさえさんは仲田さんが体調が悪く、貧血気味で輸血をしながら稽古をしていたことを明かし、「体調が悪いのが全然分からない。役者根性がすごいと思った」と涙を拭った。

 幸子さんの夫龍太郎さんの親類で、昔から舞台には欠かさず足を運んだという浦添市の仲田ハル子さん(73)は「“アイエー”という元気な声が聞けなくなると思うと寂しい。本当は続けてほしいけど、ありがとうと言いたい」と感慨深げだった。石垣島から駆け付けた与世山実さん(80)、初子さん(75)夫婦は「これだけの人間を楽しませてすごい。来年も見たかった」と声を合わせた。終演後、会場で笑顔で記念撮影をしていた名護市の伊波シゲ子さん(87)と小橋川愛子さん(54)は「大笑いしたね」とほほ笑み合った。

 「でいご座」の活動は終えた仲田幸子さんだが、次の活躍の場がすでに準備されている。2020年に公開予定の喜劇映画「なんくるないさぁ ザ・ムービー!」への出演だ。16日の舞台撮影からクランクインし、20年4月にクランクアップの予定。

 企画したのは13年のキネマ旬報日本映画1位「ペコロスの母に会いに行く」のプロデューサー村岡克彦さん(56)=東京都。村岡さんは「日本で一番明るく、平和を望む県民を引っ張ってきた偉業をたたえたかった。笑えて楽しいエンターテインメントにしたい」と力を込めた。

 映画は亡くなった仲田さんを成仏させようと、沖縄中を巻き込んだ騒動が巻き起こるというストーリー。

 仲田さんは舞台終了後「映画に出るのはあまり好きではないけど、笑いだったらいいじゃない」と出演を決めた理由を話した。