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外国人観光客の受診、2年で1・7倍に 増加する患者に病院側は… 島の許容量(上) 〈熱島・沖縄経済 第2部〉4


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
外国人の受診が増えている県立八重山病院=13日、石垣市

 風光明媚(めいび)な景観と独自の文化で多くの旅人を魅了する八重山諸島。国内だけでなく海外でも人気の観光地となり、石垣島の石垣空港や離島桟橋は島々を行き交う多くの人でにぎわう。ただ、元々インフラが脆弱(ぜいじゃく)な島に多くの観光客が訪れることで住民生活に支障が及んだり、想定もしていかった新たな事態が生じたりしてきた。外国人の病院受診の増加もその一つだ。

 石垣港への大型クルーズ船の寄港数は2年続けて100回を超えて推移する。寄港が頻繁になる中で、船内で出た体調不良者を県立八重山病院(石垣市)まで救急搬送する事例も起きているという。

 特に船が港を離れた後は、患者のために戻ることはできない。海上保安庁のヘリコプターに医師を乗せ、航行している船から患者を搬送して病院で治療に当たる。家族はヘリに同乗できず、入国手続きをしている間に患者が亡くなった例もあったという。

 クルーズ船に限らず持病のある外国人旅行者が急な体調変化を起こしたり、慣れない交通ルールの中でレンタカー事故を起こしたりすることも多い。通常業務に加えて飛び込んでくる緊急事態に、病院側も疲弊気味だ。

 県立八重山病院の2016年度の外国人の受診件数は96件だったが、18年度は約1・7倍の160件となった。19年度は4~7月だけで63件あり、前年を上回る見込みだ。

 外国人受診者が増えている状況に同院職員は「国に関係なく患者は分け隔てなく診るが、同じ治療でも時間のかけ方が違うので大変な思いをしている」とつぶやく。言語の対応など通常より受診に時間が掛かることに加え、医療費の補助に関わる保険会社とのやり取りなども日本人と比べて煩雑になることが多い。

 旅行保険に入っていない外国人の受診者は少なくない。加入していても医療費の補助が出ないタイプの保険というケースも見られ、治療費がかさむのをいやがって必要な手当を拒む患者もいる。

 県立八重山病院では、旅行保険に入っていないため治療費未払いが起きるという案件は今のところ起きていないというが、篠﨑裕子院長は「旅行保険の加入を義務付けてほしい。そうすれば患者も病院側も負担が少なくなる」と訴える。

 クルーズ船で石垣島に来て急な手術が必要となり、治療費が300万円に上った中国人客もいた。本人の承諾を得て3回に分けてカードで支払ったというが、病院職員は「たまたま支払いができる経済状況だったが、もしそうでない場合は未収金になっていただろう」と渋い表情だ。

 今後もホテル新増築やクルーズ船岸壁の整備などで観光客の増加が予想される八重山諸島。篠﨑院長は「石垣島には比較的裕福な客が来ているので医療費を払うことができるが、今後LCC(格安航空会社)の便数が増えて誰でも来られるようになると(未払いの発生が)心配だ」と懸念する。
(「熱島・沖縄経済」取材班・中村優希)